世界でもっとも多く採用されている通信方式「2G(GSM)」がシンガポールでついに全面終了。その影響は?

高齢化社会ゆえの問題も

 携帯電話事業者3社が主張するように2Gサービスの利用者はごくわずかであったが、2Gサービスの利用を継続する顧客には高齢者の割合が高かった。  3社は2Gサービスの利用者を4G/3Gサービスへ移行させるため、低価格なスマホを用意するなど巻き取り策を実施したが、簡単な操作体系を採用した高齢者向け携帯電話からスマホへの乗り換えに不安を抱える高齢者は円滑に移行しなかった。  なお、高齢化社会のシンガポールでは高齢者向け携帯電話も一定の需要があり、2Gサービスのみに対応した高齢者向け携帯電話もそれなりに流通していたのだ。  そのため、情報通信メディア開発庁は高齢者に向けてスマホ教室を案内し、政府組織までもが高齢者のスマホに対する不安を解消して移行できるよう支援したが、それでも移行しない高齢者のために最大手のシングテル・モバイル・シンガポールは3Gサービスに対応した高齢者向け携帯電話の販売を開始して高齢者を救済する取り組みが見られた。

利用者への影響は?

 NTTドコモやKDDIなど日本の携帯電話事業者も告知したように、シンガポールでは国際ローミングで2Gサービスが利用不可となる。国際ローミングは4G/3Gサービスで利用可能で、携帯電話事業者から販売された端末であれば公式ウェブサイトで利用可否を確認できるため、渡航前に確認すると無難だろう。  また、注意したいのが2枚のSIMカードを挿入して2回線を同時待受できるデュアルSIM端末の扱いである。優先のSIMカードは4G/3Gサービスを使えても第二のSIMカードは2Gサービスのみ使える端末は多く、そのような端末では同国でデュアルSIMの機能を活用できない。

旅行者向け前払い式SIMカードでは2Gサービスに非対応と案内

 シンガポールは外国人労働者が多いことでも知られるが、デュアルSIMの機能を活用して同国のSIMカードと国際ローミングで母国のSIMカードを同時待受で使う外国人労働者も多く、同国の移民労働者センターが注意喚起を公表するほどであった。第二のSIMカードで3Gサービスを使える端末は増加しており、同国でデュアルSIMの機能を利用したい場合は第二のSIMカードで3Gサービスを使える端末を選ぶようにしたい。

シンガポール・チャンギ空港内の両替所で2Gサービスの終了を告知

 なお、シンガポールは外国人旅行者向け前払い式SIMカードが充実し、携帯電話事業者の販売店のほか両替所などでも購入できる。両替所やSIMカードでは2Gサービスは利用不可と案内するなど、同国の通信事情に精通していない外国人への配慮も感じられた。  GSM方式はオーストラリアや米国で一部の携帯電話事業者が終了し、さらに台湾やオーストラリアでは2017年中にすべての携帯電話事業者が終了する見込み。いずれも日本人渡航者が多い国・地域であり、携帯電話の利用時はシンガポールと同様に注意したい。 <取材・文・撮影/田村和輝>
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