「EV版フェラーリを目指す」京大発EVベンチャーの挑戦【GLM小間裕康社長インタビュー】

GLM社長の小間裕康氏

――まずは、あえて4000万円のスーパーカーを販売する理由を教えてください。 小間:EVスーパーカーのマーケットには競合が少なく、高価格帯の車を小規模生産で投入しても収益を上げられると思いました。フェラーリやランボルギーニ、マセラティなどの高級車にEVはありませんし、今後5年を考えても、スーパーカーのEVは出てこないはず。また、ブランド戦略的にも、一度下げたブランドを再び上げるよりも、ハイブランドからラインナップを徐々に広げていくほうが効率的であるためです。 ――G4はどのような車になるのでしょうか? 小間:特別な空間やクラス感を体現できる車を世の中に出していきたい。トミーカイラZZの製造工程で、日本にはまだまだ世に出ていない先端の技術があることに気づきました。生産規模10万台という大手自動車メーカーでは、品質もさることながら、非常に高いコストダウン目標を要求されます。ただ、ハイブランドのG4なら、そうした技術や製品も調達し、あるいは共同開発できると思いました。 ――今後のEV市場についてどのように見ていますか? 小間:2015年にドイツのフォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正が明らかになって以降、欧州の自動車は完全にEVに舵を切りました。もうこの流れは止められないでしょう。特にこれまでネックだった電池のバッテリー問題が技術革新で解決される見込みがでてきたのが大きい。EVは1kWhあたりの発電コストが1.5万円になると、ガソリン車と変わらないと言われていますが、今は1.7万~1.9万円まで下がってきている。また、充電スタンドの問題も、現在3万機ある国内の給油スタンドを、充電スタンドの数が上回ってきている。自宅のコンセントでも充電できますし、その感覚が理解されれば、EVは一気に広まると思います。 ――他の競合EVメーカーについてはどう見ていますか? 小間:今、中国でEVメーカーが次々と立ち上がっています。彼らがターゲットとしているのは、テスラより安価な、普及価格帯のEVマーケット。ただ、そこはレッドオーシャンなので、我々としてより上の価格帯を狙いたい。ターゲットを絞ることで、フェラーリやランボルギーニのような加速の良さや、どぎつい運転性能が実現できると思っていますし、スーパーカーならEVのそうした性能をもっと引き出せるはずです。 ――EVを普及させるためには原発の問題もあります。 小間:EVに傾注している企業はみな、発電というものに対して責任を持たなければならないでしょう。私は仕事柄、最先端技術に出合うことも多いですが、まだ実用化や量産化されていないものの、発電効率に関してはかなり高いレベルで技術革新が起こっています。治験が蓄えられ、ある瞬間にブレイクスルーが起きるのではないでしょうか。一昔前は違ったものの、今の時代は儲かることと、タメになることを技術でリンクすることができる。これだけ多くのリソースがあれば、解決策はきっとあるはずです。
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「販売価格は3000万円を想定していた」
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