フランス大統領選、ごく普通の人々が「極右」を志向する理由

極右に向かうフランス、ドイツ、オランダ、極左に向かうギリシャ、スペイン

 ちなみに、フランス、ドイツ、オランダの1960年以降の外国人人口割合(%)は、下記のように急上昇している。 フランス:1960年【4.7】1976年【6.6】1990年【6.4】2014年【12.4】 ドイツ:1960年【1.2】1976年【6.4】1990年【8.2】2014年【13.2】 オランダ:1960年【1.0】1976年【2.6】1990年【4.6】2013年【11.6】 出所:Y.soysal, Limits of Citizenship (Chicago,1994年) およびOECD International Migration Outlook (2016年) これら難民は、出口の見えないシリアの内戦、アフリカ各地の支配層の腐敗による地域紛争そしてISISの出現等によるもので、ヨーロッパ社会と社会システムに大きな影響を与えている。  ヨーロッパ諸国の2016年における失業率を見てみよう。極右政党が台頭してきたフランス、ドイツそしてオランダは下記の通り。  フランス:10.04% ドイツ:4.16% オランダ:5.0%  この3か国ではフランスの失業率が特に高い。4月末、大統領選挙絡みで放送されたテレビ番組のインタヴューで、フランスの有名校を卒業しても就職できないある若者が、父親をナチスの強制労働で殺された母親の反対を押し切って「国民戦線」に加わったという内容のものがあった。また同番組では、ブルターニュ地方の伝統的な農家がEUの規制から行き詰まり「国民戦線に鞍替えする」と語ってもいた。  一方、スペインでは、若者や学者など知性派の市民運動から始まった極左政党ポデモス(最近は中道左派よりに変化している)が2016年末の総選挙では第三党に躍進し、一時支持率が与党を抜いてトップに立った。ギリシャでは、2015年に最大野党の急進左派連合が政権を握った。両国の失業率は、ギリシャが23.55%、スペインが19.64%(ともに2016年)だった。ギリシャとスペインは経済危機と失業問題から、右翼より左翼のほうに引っ張られているのだ。  最近になって気がついたことがある。世界には何の理想も何の偉大さも持ち合わせない政治家ばかり。“知の巨人”といわれるような偉大な哲学者や歴史家や科学者がいなくなった。偉大な芸術家が出なくなった。グローバル化によって世界の単一化が進み、文化の多様性が消滅、国民国家の偉大な指導者も哲学者も芸術家も、必要がなくなったのだろう。  いま世界は“経済の危機”、“社会の危機”そして“環境の危機”という出口の見えない三重苦に直面している。これは、約300年続いたヨーロッパ発の西洋合理主義文明の終焉を感じさせる。 <文/谷口正次 photo by Global Panorama via flickr(CC BY-SA 2.0)> 資源・環境ジャーナリスト。NPO法人「ものづくり生命文明機構」副理事長、サステナビリティ日本フォーラム理事。著書に『経済学が世界を殺す~「成長の限界」を忘れた倫理なき資本主義』(扶桑社新書)など。
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経済学が世界を殺す

このまま信じていたら人類は滅亡する