Galaxy S8シリーズをオーストラリア最速と宣伝するテルストラ
もっとも、通信速度は理論値こそ受信最大1Gbpsであるが、一般的な利用環境における実効速度は利用環境により低下する。
テルストラは目安の実効速度を案内しており、受信最大1Gbpsの端末であれば5~300Mbpsを目安としている。なお、受信最大600Mbpsの端末では5~200Mbps、受信最大450Mbpsの端末では5~150Mbps、受信最大300Mbpsの端末では2~100Mbps、受信最大150Mbpsの端末では2~75Mbpsと案内しており、当然ながら理論値が速いほど実効速度も速い。
テルストラは、報道発表資料では世界最速の1Gbpsと大々的に宣伝しているが、販売店を中心にオーストラリア国内では実効速度を考慮して理論値をあまり前面に出さず、オーストラリア最速と表現するにとどまる。それでも、オーストラリア最速という事実は競合他社と差別化するための強力な武器となっている。テルストラはオーストラリアで加入件数が最も多い携帯電話事業者であり、先進的な通信網はテルストラを支える重要な要素のひとつである。
なお、受信最大1Gbpsで利用できるエリアは限定的で、まずはメルボルン、シドニー、ブリスベンの中心業務地区の中心部から半径1km以内となり、その他の地域は順次拡大予定としている。
テルストラはキャリアアグリゲーション(CA)、256QAM、4×4 MIMOの技術を同時に適用して受信最大1Gbpsに高速化した。
CAは複数の搬送波を束ねて通信する技術で、通信速度の高速化や通信の安定性向上にも貢献する。テルストラはLTEで複数の周波数を利用し、CAも複数の組み合わせを導入しているが、受信最大1Gbpsを実現するために2.6GHz帯(Band 7)で20MHz幅の搬送波を2つ、700MHz帯(Band 28)で20MHz幅の搬送波を1つ、合計で3つの搬送波を束ねて通信する。なお、この2.6GHz帯と700MHz帯は2013年4月下旬から2013年5月上旬にかけて実施された周波数オークションで取得した。
また、256QAMは一度に運べる情報量を増やす技術である。従来の64QAMから256QAMに高度化することで、一度に運べる情報量を6ビットから8ビットに増加し、帯域幅を広げずに通信速度の高速化が可能となる。
テルストラは3つの搬送波を束ねたCAと256QAMを同時に適用して受信最大600Mbpsとしたが、新たに4×4 MIMOを加えて受信最大1Gbpsに引き上げた。4×4 MIMOは基地局側と端末側でそれぞれ4本ずつのアンテナを利用して通信する技術で、3つの搬送波のうち2つの搬送波で4×4 MIMOが適用される。
テルストラはこれらの技術を導入するにあたり、スウェーデンの通信機器ベンダであるエリクソンなどと協業した。エリクソンとは長期にわたり協力関係を築き、積極的にエリクソンの通信設備を採用している。