プラクルアンがコレクターズアイテムとなり、投資や投機目的で蒐集する人も出てきているのだ。
これらの対象になっているのは主に骨董品に当たる、歴史的な背景がはっきりしている希少価値のあるものになる。プラクルアンは安いものでは約10円前後くらいからあるが、数百年前に有名な僧侶が作ったものなどは日本円で数百万円から数千万円にもなるほど高値がつく。
プラクルアンだけを扱った雑誌も週刊月刊合わせて50誌はあるとされるほど大きな市場だ。正確な市場規模は不明だが、数十億バーツ(日本円で100億~300億円の規模)とも言われる。雑誌の中には日本のファッション誌のように付録としてプラクルアンを付けるものさえある。雑誌の内容は古いプラクルアンの見分け方などが掲載され、コレクターたちがそれを見て勉強するのである。
プラクルアン専門誌の専門店
バンコクの旧市街であるチャオプラヤ河沿いにタープラチャン市場(あるいはサナーム・プラ)がある。ここはタイ最大のプラクルアン市場として知られ、コレクターが虫眼鏡を片手に掘り出し物を探している。
市場ではコレクターが真剣にプラクルアンを物色している
もちろん市場の店主たちもまたコレクターであり、百戦錬磨の人たちだ。市場になかなか骨董品は出回らず、一般コレクターは仕方なく顔が自分好みだとかそういった理由で普通のものを買っていく。それはプラクルアンをコレクションのひとつ、あるいはトレードのアイテムとして見ていながらも根が敬虔な仏教徒であるので、プラクルアン自体のご利益を信じているからでもある。
価値のあるプラクルアンはタイでは不動産などの財産と同等と見られている。そのため、日本では考えられない方法で利用される。例えば、中古車を購入する際、現金ではなくプラクルアンを持ち込むことで、その価値と同等の現金として利用できる。もちろん数十万円以上の価値がないと中古車とは交換できないが、たかだかお守りとはいえない価値感がタイにはある。
日本人でも仏像や神秘的な道具を好む人はプラクルアンに注目している。歴史的な価値のあるプラクルアンは外国人でも入手することはできるが、それをタイ国外に持ち出すことは許されない場合もある。タイでは歴史的な仏像など仏教に関連した品物はタイ政府の許可を得ないと国外に持ち出せないのだ。
そういった法的な背景もあって、プラクルアンはまさにタイ国内だけにしか存在しない市場である。経済規模は日本よりも小さいにも関わらず、日本円で何千万にもなるほどの値段がつく、おもしろい市場である。
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かつてのプラピムはこのような単純なデザインだった
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魔法の力があるとされる石「レックライ」。これもお守りとして身につける人がいる
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タープラチャン市場はタイ最大のプラクルアン市場だが、呪術関係のグッズも売られている
<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:
@NatureNENEAM)>