犯罪が減少しない要因の一つとして挙げられているのが、暴力行為に対する訴えを元に裁判が行われ判決が下される場合が非常に少ないということだ。
2010年7月から2016年12月までにジャーナリストが被った暴力行為への訴えが798件ほど記録されているが、これまで判決が下されたのは僅かに3件だという。2012年に1件と、2016年に2件だけである。即ち、99.7%の訴えに対して如何なる判決も下されていないということなのである。その798件の訴えの中には47人のジャーナリストの殺害事件も含まれている。
今年1月に殺害されたジャーナリストのモイセス・サンチェスの犯行容疑者4人が殺人容疑で収監されたが、現在まで公判が行われていないのである。その上、首謀者とされているメデジン市のオマル・クルス前市長に対しては<証拠不十分として保釈される可能性が強い>というのである。
上述798件の訴えの中で、今の処、<107件の容疑者が裁判を受ける>ことになっているだけである。それは僅かに13%という比率を意味し、<10人の容疑者の中で僅かに一人だけ>が裁判にかけられるという割合となっている。(参照:「
Plumas Libres」、「
Animal Politico」)
これまで暴力行為の被害を受けたジャーナリストは全員、地方のメディアで働いていた者であった。冒頭の3人のジャーナリストも同様である。それは犯罪組織にとって地方の方が首都があるメキシコシティー連邦区よりも活動し易いからである。
3月2日に殺害されたセシリオ・ピネダは郊外の洗車場で待っていた時にオートバイに乗って近づいて来たグループが発砲した銃弾に打たれた。ピネダはゲレロ州の州知事を含め官僚と同州に根を張る犯罪組織ロス・テキレロスの間で密約が交わされていることを暴き批難していた。また、フェースブックのビデオを使って、彼は<州予備警察がロス・テキレロスとそのリーダーハコボ・デ・アルモンテを庇っている>ことを語り、市民がこの犯罪組織の前に立ち上がっていることを伝えていた。彼には<32000人のフォロワー>がいた。紙面はこれを切っ掛けにして州知事の治政を問題視するようになった。同様に、彼は<市民が立ち上がって麻薬組織の家族を人質にしてロス・テキレロスが誘拐している人達を救出するために人的交換をしていること>にも追跡報道していた。
彼が殺害されたのは彼のこれらの仕事が犯罪組織にとって煙たがられていたことが理由であるというのは疑いのないことであるとされている。(参照:「
Univision Noticias」)