日本、中国、韓国、北朝鮮、台湾。東アジアのそれぞれの国は、政治的に様々な問題を抱えており、観光産業は度々、その政治の災禍に苛まれる。
日韓関係が急激に冷え込むと同時に韓国の日本人観光客が激減したり、尖閣諸島の問題等、日中間の外交問題となれば、訪日中国人の数にも影響したりする。中国と台湾も然り。北朝鮮も韓国との軋轢により、韓国で人気のあった北朝鮮ツアー(金剛山見学ツアー)も中止されて久しい。
ただ今回の韓国・大統領選の結果によっては、東アジアの観光事情も大きく変化する可能性もある。現在、大統領選の調査結果のトップを走る文在寅(ムン・ジェイン)候補や次点にまで大きく躍進した安哲秀(アン・チョルス)候補も、親北の人とされ、北朝鮮との関係が大きく改善されると言われている。逆に同盟国であるアメリカや日本とは距離を置く政策をとるといわれており、中国との距離も今よりは改善される可能性が高い。韓国の観光産業にとっては、今回の大統領選が大きな転機になるのは間違いないだろう。
一方、日本は、独自の日本文化をウリに欧米諸国からの観光が毎年伸びているが、政府が掲げる観光立国のためには、やはり東アジアの近隣国の観光客は「お得意さん」であってほしい事情もある。
中国人観光客が激減した韓国では、今回の事態が、中国人の爆買い依存からの脱却を図る良いチャンスだという声も聞かれ、新たな観光資源開発を積極的に行っていこうという動きが出てきた。中国人観光客の日本観光が有名スポット巡りから小さな日本文化体験に至るまで、グルッと一回りした現在、近隣国にどのようにアピールしていくのかも注目だ。
<文・安達 夕>