ビーサンまで。目が慣れてくれば、田舎のヤンキーが履いてなくもなさそうに見えてくる
ただ、謎な日本語から商品そのものに目を移すと、ポール・スミスやマリークヮントなどの有名ブランドを生み出したイギリスの良さが、質、デザインに出ているのに加え、値段もファストファッションブランドより若干高めの設定。ブランドを安売りしないというプライドが見てとれる。
平日の昼前にもかかわらず、ひっきりなしに出入りする多人種の買い物客。肌で感じた流行の波だったが、やはりというべきか、1時間店内にいても日本人には1人も会わなかった。
日本語なのに、日本国内ではほとんど目にすることのないSuperdry。ゆえに、日本での知名度は低く、「海外旅行先で見た」、「外国人が着ているのを見たことがある」という目撃情報に留まる。
店舗はニューヨークの一等地にある。ユニクロと隣接しているのが何ともシュールだ
商品には「Japan」と書いてあるものまで存在するのに、どうして日本に上陸しないのだろうか。
筆者は当初、「不可解な日本語のせいだ」と思っていたが、この疑問をイギリス本社に問い合わせたところ「商標登録の兼ね合いで日本には進出もしないし、直送もしない」との回答が返ってきた。
明記はなかったとはいえ、日本の「スーパードライ」といえば、どの商品との兼ね合いなのかは容易に見当がつく。さらに、前出のダンカートン氏とホルダー氏が東京に来た際、この“日本のスーパードライ”そのものにインスパイアされ、自動翻訳機能で訳した言葉をそのまま採用したという話もあり、こちらも後日問い合わせてみたが、この件の回答は期限内には得られなかった。
クールジャパンと叫ばれて久しく、2020年の東京オリンピックに照準を当て、政府も日本ブランドを広めようと躍起になっている。
一方、海外では我々が想像している以上に日本の文化が”愛されていた”と考えると、どこか誇らしく思えてはこないだろうか。日本語はもはや、日本人だけのものではなくなってきているのかもしれない。海外へ行った際は、この店を是非チェック(しなさい)。
<取材・文/橋本愛喜>
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『
トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは
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