タイで人気上昇中の新興中級ホテル。日本人には既視感がある理由とは?

 このホテルのオーナー、チャータヤー・ウォンパイブーンさん(ニックネームはウーさん)はタイで有名なデザイナーだ。12歳で当時誰もやっていなかったオリジナル・プリントのTシャツを皮切りに創作活動をはじめ、今は本職をインテリアデザイナーとしている。

THE HOUSE OF PHRAYA JASAENのオーナー、チャータヤー・ウォンパイブーンさん。日本語はできないが、英語はぺらぺら

 タイでアートデザイナーとして食べていくにはインテリアだと見て、このジャンルに入って27年が過ぎた。現在48歳であり、この年齢でデザイナーとして地位を確立しているということは相当な富裕層であると見る。実際、話し方も穏やかでユーモアにあふれた人物であった。 「インテリアデザインを手がけていることもあって、いつかは自分でデザインしたホテルを経営したかった。そんなときに、この物件を譲り受けることができ、ホテル業を副業として始めました」  まだオープンして2年程度しか経っていないが、今はタイ旅行のオフシーズンでも70%以上の稼働率となる。基本的に宣伝はどこにも出していないが、口コミでここまで広がった。主に「トリップアドバイザー」がメインになる。外国人では主に中国人や欧米人が泊っていく。  稼働率が上がっているのであれば、もっと小規模中級ホテルではなく、大きな規模で経営した方がよかったのではないか。しかし、ウーさんは首を横に振った。 「うちのホテルは今32部屋で営業していますが、これがちょうどいいんです。25から35部屋以内、これ以上大きくなるとオペレーション的に素人では経営が難しいのです」  こういった事情もあって、「THE HOUSE OF PHRAYA JASAEN」は今ベストな状態で経営しているのだそうだ。

凝ったデザイン。でもどことなくラブホ感が

 このホテルの部屋は1部屋だけ友人のデザインで、ほかの31部屋はすべてウーさんのデザインになっている。思い思いのコンセプトで設計され、間取りは同じでも同じデザインの部屋はない。

車をコンセプトにしたスタンダードな部屋。1泊1330バーツ~(約4360円~)

 例えば、車をコンセプトにしている部屋はガレージのような雰囲気にミニカーなどを飾り、スラムをイメージしている部屋はトタン板や黒電話が置かれる。拾ってきたペットボトルをガラクタとは思えないセンスで飾りつけた部屋もあった。真っ白に統一した部屋と黒で統一した部屋は内部で繋がり、友人同士でシェアすればブラック&ホワイトの部屋に早変わりする。  注目したいのは、牢獄をイメージした部屋と丸ベッドが置かれた部屋だ。牢獄コンセプトの部屋はシャワールームがガラス張りになっているし、トイレもほぼ丸見え。檻のオブジェには手錠もあった。丸いベッドはタイではあまり見かけないもので、日本人の特に40代以上の人にはラブホテルを想起させる。

牢獄をイメージした部屋(Prisoner room)。オブジェには檻や手錠があり、プレイも楽しめる。(THE HOUSE OF PHRAYA JASAEN提供写真)

 タイではマッサージパーラー(日本でいうソープランド)でたまに見かけるくらいで、かなり珍しい形状のベッドだ。だから、タイ人男性にとっても“エロ”に直結し、一部のタイ人がこのホテルをラブホテルだと認識してしまうのかもしれない。
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地元民には密会にも便利な立地!?
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