米国からの投資のお陰で、メキシコ社会保障協会によると、<12万5000人がジーンズの生産に従事している>という。その主な生産地域は<ドゥランゴ、プエブラ、グアナフアト、メキシコ・シティー>に集中している。一方の米国ではメキシコで生産された<ジーンズの販売業者は6万4000人いる>と米国衣類及び靴協会が明らかにしている。
米国とメキシコでジーンズへの需要が如何に高いかを示すものとしてメキシコ社会保障協会の調査が示しているが、<米国ではひとりにつき7枚のジーンズ>を持ち、メキシコでは5枚のジーンズを持っている>ということである。また、アパレル産業会議所はジーンズだけで<両国の年間取引総額は80億ドル(9200億円)に成る>と報告している。それはメキシコで生産されている<ジーンズの60%>を意味するものである。残り<40%は国内消費とペルー、チリ、コロンビア向けに輸出>しているという。(参照:「
Fashion United」)
トランプ大統領がメキシコからの輸入に20%の関税を掛けると発言しているが、そうなれば最終的にそれは米国の消費者の負担に繋がることになる。しかし、それはジーンズの生産体制の見直しを迫るものとなって来る。そして、その影響でメキシコでのジーンズの生産が減少すれば、メキシコ経済の後退を意味するようになる。それは同時に米国における雇用の減少にも繋がるようになる。メキシコが米国に代わる別の市場を見つければ理想的であるが、米国で消費されるだけの輸出量を他の国で見つけることは先ず不可能なのである。
しかし、実質的に現状のままでのNAFTAが継続される見込みはなく、メキシコは新たな市場開拓が必要となっており、同時にアメリカ人はこの先ジーンズの新たな仕入先が必要になってくる。
<文/白石和幸 photo by
Myriams-Fotos via pixabay(CC0 Public Domain )>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身