企業の人手不足が過去10年で最悪に…特に深刻な業界は「放送」と◯◯◯!

「賃上げ」実現を求める安倍政権の成長戦略。その要望を受け、ローソン、味の素など一部の大手企業ではベースアップが行われている。こうした動きは働き手にとっては明るい材料となる一方、企業側にとっては有効求人倍率の人件費の上昇や人手不足の長期化などでコストアップを招き、マイナスの材料にもなりかねない。  調査会社の「帝国データバンク」は、人手不足に対する企業の見解について全国2万3796社を対象に調査を行い、その結果を2月21日に発表した。

photo by はむぱんさん

過去10年でもっとも高い値に

 回答があった1万195社のうち、正社員が不足していると回答した企業は43.9%。半年前の調査から6.0%も増加し、過去10年で正社員の人手不足はもっとも高い値となった。  業種別では「放送」の73.3%がトップで、さらに「情報サービス」「メンテナンス・警備・調査」「人材派遣・紹介」「建設」がいずれも6割を超えた。とりわけ「放送」は2016年7月、2016年1月、2015年7月と4回連続でトップとなり、また、ワースト2の「情報サービス」も65.6%と、前回調査から5.6%増加するなど、正社員の人手不足感が著しかった。  他方、「出版・印刷」や「繊維・繊維製品・服飾品卸売」、「輸送用機械器具製造」では正社員の人手不足の回答は2割台にとどまった。  人手不足感がもっとも高い業種ともっとも低い業種における割合の差は46.0%と、前回調査(60.2%)からは14.2%も縮小するなど、企業の人手不足感はますます高まっていることが判明した。  また、企業規模が大きい企業ほど不足感が強く、「大企業」では51.1%と人手不足の回答が半数を超えた。大企業における人手不足が中小企業の人材確保にも影響を与えている可能性がある。企業からは以下のような声が集まった。 「工事案件が数多くあり、受注しようにも人手が足りずに受注しかねる状態」(経営コンサルタント、東京都) 「全般的に人手不足で仕事を取りに行けない。機動力のある大きい企業に有利となっている」(建築工事、福井県)

非正社員も3割近くが不足感

 さらに非正社員に関しても、企業の29.5%が不足していると感じており、こちらも半年前から4.6%増加した。業種別では「飲食店」「娯楽サービス」「飲食料品小売」などで高い結果が現れた。  そんななか非正社員の人手不足している業種は、上位10業種中8業種が小売や個人向けサービスとなり、個人消費関連の業種でとりわけ人手不足感が高くなっている模様だ。  規模別では、規模の大きい企業ほど不足感が強くなっており、他方、正社員と非正社員の両方で上位に上がったのは「メンテナンス・警備・調査」「人材派遣・紹介」の2業種のみにとどまり、雇用形態による不足業種が大きく異る結果となった。  今回の調査では、人手不足は「大企業」ほど強く感じており、採用活動が積極的となる背景ともなっていることが明らかになった。その影響で中小企業にとって人材確保がより難しくなるとともに、賃金上昇にともなうコストアップが収益の圧迫要因になっていることも判明した。 <文/HBO取材班> <参照>帝国データバンク 「人手不足に対する企業の動向調査(2017年1月)」 http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p170206.pdf