滑稽なのは、この稲田が、生粋の改憲論者だと言うことだ。
所謂「百人斬り訴訟」で法曹史上に残る大惨敗を喫した成績の悪い右翼弁護士時代から、防衛大臣となった今現在に至るまで、彼女は、「憲法改正」の旗をおろしたことがない。「中国の膨張主義などのリアリティーを直視した時、憲法9条は現実にそぐわないから、即刻、改正すべきである」と言う立場にずっと立ち続けてきた。しかし今、彼女は、「現実はいかようにも言い繕うことができ、憲法の枠内だと言い張れる」と開き直っている。だとするならば、「現実にそぐわない憲法を時代のリアリズムに合わせて変える」など、必要ないではないか。
さらに言えば、「現実はいかようにも言い繕うことができ、憲法の枠内だと言い張れる」などと言うロジックを平気で開陳できるような人間が新しく書き直す憲法が、仮令どんな内容のものであれ、もはやそれは憲法ですらないと言うしかないではないか。「政府の都合で現実はいかようにも言い繕える」などと嘯く輩が書く憲法に、「政府の権力を縛り、規制する」と言う憲法の基本機能を有するはずなどない。
このように、稲田の答弁は、立憲主義の観点から、一切許容すべきものではないことが明らかだ。
ジャーナリストの布施祐仁さんによる情報公開請求で明らかになった、「南スーダン派遣部隊の日報隠蔽問題」は、ここにきて「基礎的な一次情報である日報の隠蔽」という問題から、「いかに、現政権が、憲法秩序をないがしろにする政権であるか」という極めて深刻な問題を浮き彫りにした。
これ以上、稲田を公職につけておいてはいけない。このままだと、立憲主義が、いや、日本の近代そのものが、危うい。
参照:
「南スーダンに関する布施祐仁さん(PKO日報問題)と三浦英之さん(南スーダン隣国ウガンダからの現地報告)のリポートまとめ」
<文/菅野完(Twitter ID:
@noiehoie)>
※菅野完氏の連載、「草の根保守の蠢動」が待望の書籍化。連載時原稿に加筆し、
『日本会議の研究』として扶桑社新書より発売中。また、週刊SPA!にて巻頭コラム「なんでこんなにアホなのか?」好評連載中
すがのたもつ●本サイトの連載、「草の根保守の蠢動」をまとめた新書『
日本会議の研究』(扶桑社新書)は第一回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞読者賞に選ばれるなど世間を揺るがせた。メルマガ「菅野完リポート」や月刊誌「ゲゼルシャフト」(
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