スウェーデン研究で「牛乳有害論」が再び拡散。その真偽は?

牛乳 10月29日にイギリスの医学誌「British Medical Journal」に掲載されたスウェーデンの研究が波紋を呼んでいる。  その研究は「牛乳摂取量の多い人は少ない人より寿命が短く、女性では骨折が増えさえする」という結果を示したというもので、BBCなど海外メディアのみならず、日本のネットメディアもさかんに「牛乳を飲むと早死すると判明」などと煽り気味のタイトルをつけ、Facebookなどで大いに拡散する結果となった。  同研究では、1987年~1990年当時に39歳から74歳だったスウェーデン人女性6万1433人と、1997年当時に45歳から79歳だったスウェーデン人男性4万5339人を対象に、「何をどれくらいの頻度で食べているか?」について長期間の追跡調査を行ったのだという。  その結果、女性は20年間に及ぶ調査期間の間に女性は1万5541人死亡し、1万7252人が骨折、4259人が股関節を骨折し、男性の被験者は、約11年の調査期間中に1万112人が死亡、5066人が骨折、1166人が股関節を骨折したのだという。さらにこの結果を詳しく見ると、牛乳を一日3杯以上飲んでいた人は、一日1杯以下しか飲まない人に比べ、死亡率で1.93倍、股関節骨折の割合が6割高く、骨折全体でも15%上昇したそうだ。  この結果の報道を受けて、10月30日の自民党畜産・酪農対策小委員会では江藤拓前農水副大臣は「生産者に迷惑をかける」と指摘し、農水省に「何か反論はできないか」と正確な情報を発信するよう求めたのだが、これがさらにソーシャルで「早速自民党農水族が圧力を」などと取る人も現れる結果となってしまった。  果たして、牛乳は本当に有害なのだろうか? ネットで拡散しているスウェーデンの研究結果を伝えたニュース記事のリンクは、そのようにしか思えなくなるように書かれている。しかし、元の論文によくよく目を通してみると、また違った側面が見えてきた。  論文の原文には「Strengths and weaknesses of this study(我々の研究の強みと弱み)」と題した項で、研究結果は「reverse causation phenomenon(逆因果現象)」すなわち、「牛乳をたくさん飲んだから骨折が増えた」のではなく、「骨粗しょう症を患う人が、骨折を予防するために牛乳の摂取量を増やしたが骨折した」ことで、骨折の原因が牛乳にあるとされてしまう、原因と結果を取り違える現象が起きている可能性があることなどを明記。”今回の研究で示された牛乳の摂取量と死亡率・骨折頻度との関連性については偶然の可能性も排除できない”とし、さらなる研究の必要性も書いているのである。  これらの記述を見れば、研究結果の報道を見て即座に「牛乳=有害無益」と決めつけるのは早計だとも判断できるだろう。 「牛乳有害論は以前から日本の一部層には支持されていた説で、著名な医師が彼の著書でそれを書いて以来爆発的に広まったものです。センセーショナルなテーマだったため数多くの議論を呼んだものの、その医師が書いていたことについては、すでに研究者や疑似科学批判者から科学的根拠に乏しい論述が多く、統計の誤用も多かった点などが指摘されていました。ただ、今回のスウェーデンのウプサラ大学研究チームの論文が出たことでやや圧されていた有害論支持者が強力な材料を得た形ですね。こうした牛乳有害論の論文は話題になりやすいのですが、逆に牛乳が有益であるという研究結果はこれほどまでに拡散しないんですよ。例えば、このスウェーデンの研究の1か月前にはウィーンで開催された欧州糖尿病学会で牛乳などの乳製品をよく食べるで人は、全く食べない人に比べ、2型糖尿病の発症リスクが23%低下するという結果が出ています。こういうのはそこまでネットで拡散しないんですよね」(都内に勤務する内科医)<取材・文/HBO取材班>