貧困や孤独死ではない「幸せな老後」とは? ドキュメンタリー映画『人生フルーツ』が描く人生の境地

戦争、経済成長を経てたどり着いた境地

伏原健之

監督の伏原健之さん

 そもそも津端さん夫妻はなぜ団地の一角で暮らしているのか。かつて公団住宅(現・UR住宅)の設計を数多く手がけた修一さんは、高蔵寺ニュータウンに元々あった里山と調和する設計のマスタープランを提案した。ところが時代は高度経済成長のまっただ中。山は削られて平らに造成されてしまい、戸数を重視した大規模団地ができ上がった。 「平らな土地に里山を回復するには、それぞれの家で小さな雑木林を育てる。そうすれば一人ひとりが里山の一部を担えるのでは」  夫婦が高蔵寺ニュータウンに住んでいるのには、実は修一さんのこうした考えがあってのことだった。  午前中に庭を耕し、家事は夫婦で分担して行い、日頃世話になっている人には小まめに手紙を書く。生活の中に四季の変化が入り込む、ゆったりとした生活。しかし、例えば自給自足だけにこだわるというようなストイックさは感じられない。「こういう暮らし方には憧れます。今はとてもマネできませんが、いつかはこうありたいですね」と伏原さんは話す。
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「幸せな老後」のロールモデル
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