「セウォル号沈没事故」は、「崔順実ゲート」事件に揺れる韓国政局においても重要なキーワードとなっている。事故当時、朴槿恵大統領の「空白の7時間」が韓国国民の疑念と怒りを買っており、今回の「SEWOL X」の公開は、事故の真相究明を強く要求する国民たちから賞賛を受けている。
韓国主要各紙も即日でニュースを配信、国を挙げての関心の高さをうかがわせる。
特に、ソウル市・朴元淳(パク・ウォンスン)市長はツイッター上で、「犠牲になった子ども達へのクリスマスプレゼントになる。セウォル号は水の中に沈んでいるのではない。人々の偏見の中に沈んでいる」とコメントし、さらに「新しい特別調査委員会を構成し、改めて原点から始めなくてはならない」と真相究明に向けた決意を表した。
韓国の報道によれば、チャロ氏は先の大統領選直後、大統領選介入疑惑を招いたツイッターアカウントが、国家情報院関係者の名前であると主張し名を上げた。また国家要職に内定していた候補者の政治偏向的なツイッター投稿を見つけだし落選させたりもしている。
そんなチャロ氏が製作した「SEWOL X」が、9時間弱の時間を費やし結論付けた事故原因は「外力」。具体的な言及は避けているものの、韓国軍の潜水艦による衝突を明確に示唆している。事故当時から、「潜水艦衝突説」は陰謀論としてまことしやかに囁かれた話ではあるが、それを客観的な事実だけを積み上げ証明した「SEWOL X」は、噂や陰謀論ではなく、正真正銘のジャーナリズムであると評価されている。
しかし公開同日に行われた国防部の定例会見で海軍関係者は「事故当時、海域近くで作戦や訓練はなく、潜水艦が潜航できる海中環境ではなかった」と疑惑に対し一蹴した。
はたしてネット民の力が“真実”を動かすか――注目である。<文・安達 夕>