市場的にも人材活用的にもLGBT対応が遅れる日本企業。欠けているものは何なのか?

LGBTに対する取り組みを行う企業は4割弱

 この指標づくりを提案し、中心になって進めたのは、LGBTに関するダイバーシティ・マネジメント促進と定着を支援する任意団体「work with Pride」だ。同団体は日本のLGBT従業員の支援を目的としたセミナーを2012年から年1回開催してきた。そして5回目の今年10月26日には、「PRIDE指標」の評価結果を発表した。  この評価は、「ポリシー」や「啓発活動」「人事制度・プログラム」といった5つの指標の要件をそれぞれ満たしていれば1点を付与する形で、wwP PRIDE指標運営委員会が企業等からあらかじめ送られた実績を採点。その結果、82の応募企業のうち3点から5点を獲得した79社(社名非公開企業6社を含む)が表彰された。  冒頭の「LGBT調査2015」によると、LGBT層の商品・サービス市場規模は、当人の消費だけでなく、彼らを支援、支持することによって生まれる潜在的な消費も含め、5.94兆円になるという。この額は国内の旅行業者における2013年の旅行業総取扱額(約5.96兆円)とほぼ同じ規模であり、今年の第一四半期決算の結果、世界6位の富豪となったFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグの資産(5.8兆円)に匹敵する額だ。これだけの規模を持つLGBT市場は、企業にとって非常に魅力的なマーケットと言えるだろう。  社会への多様なニーズに対応するためには、イノベーションにつながるようなアイデアを生み出す有能な人材が必要だ。LGBTが働きやすい職場環境を整えることは、多種多様な人材を活用しようというダイバーシティのロールモデルにもなる。しかし、マンパワーグループが今年7月から8月にかけて924社の人事担当者にアンケート調査した結果、LGBTに対する取り組みをしている企業は4割弱、今後取り組みたいと考えている企業は2割にとどまっている。貴重な資源である人材の活用のためにも、企業の早急な取り組みが望まれる。<取材・文/河本美和子>
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