「素直にアメリカ株を買っておけば誰でも儲かる相場です。東証に上場しているETFが最も手軽な投資対象になるでしょう。万一ドル安になったとしても、それ以上にアメリカ株が値上がりしている可能性は高く、ドル高になればさらに儲かる」
ただし、大荒れが予想される日本株と、トランプ政権の経済政策で受けるダメージが大きい中国株は見送りが無難だという。また、アメリカの財政支出が増えることで長期的にはドル安圧力となるため、金価格が下落する局面があればETFなどを利用して金を仕込んでおくのもアリだという。
一方、円安株高派の宅森氏は、「日本経済は底堅く推移する」と予想する。
「’12年からは団塊世代の大量退職で生産年齢人口の割合の減少率が毎年1%以上の状態が続いていたため、いくら雇用や賃金が改善してもマクロ経済に反映されにくい状況でした。しかし今後は減少率が落ち着いていくので、雇用や賃金の改善が効いてくる。GDPでの研究開発の評価がやっと欧米並みになることで、世界の投資家からも日本市場が見直されるチャンスはあるはずです」
いずれにしろ、日本、先進国、新興国で株式を分散投資している人は、その配分を見直す時期にきているかもしれないわけだが、見通しの明るいアメリカ経済にも、不安要素はある。
「移民やムスリムに対する攻撃的な姿勢が強まるほど、『トランプ暗殺』のリスクが高まる。そうでなくともトランプ氏の発言に相場が振り回されるので、1月の就任演説や5月のタオルミーナサミットなどのイベント前後は注意が必要です」(土居氏)
「トランプ氏の経済政策は短期的にはプラス要因ですが、移民を制限したり保護主義的な政策を進めていくと、中長期的にはマイナス面が出てくることもあります」(宅森氏)
現在の情勢をナチス・ドイツにたとえた土居氏は、最後にこうアドバイスする。
「今の状況は第二次世界大戦の直前に似ているうえ、バルト3国や中東など紛争の火種もあり、世界の秩序に大きな変化が生じる転換点になるかもしれません。歴史を紐解けば、こうしたタイミングでは必ず大儲けする人がいます。投資という観点では、こうした時こそビッグチャンスになるのです」
春先の仏大統領選で極右政権の躍動など、ポピュリズムが世界的に台頭するという見方もある。激動する世界情勢を静観するだけでなく、運用戦略も怠りなきよう。
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米国政権1年目のGDPとドル円レート
【アメリカ株】
新大統領がインフラ投資、大幅減税、金融や環境規制緩和など経済を刺激する政策を連発し、株価は手堅い上昇局面に。この傾向は少なくとも’17年いっぱいは続く。
【日本株】
足元では急上昇しているが、アベノミクスに限界も見える中、トランプ新大統領の発言と為替相場に振り回される神経質な展開か。底堅く推移するとのアノマリーもある。
【新興国株】
グローバリゼーションの恩恵を最も受けてきた中国経済が、時代の大転換で失速へ。アメリカの保護経済政策でインドIT企業への発注大幅減少か。他の新興国も停滞が予測される。
【土居雅紹氏】
経済アナリスト。大和証券、大蔵省財政金融研究所、ゴールドマン・サックス証券、eワラント証券を経て独立。バブル相場での投資術や世界経済の情勢に詳しい「バブルの達人」
【宅森昭吉氏】
三井住友アセットマネジメント。ESP景気フォーキャスト調査委員会委員、景気ウォッチャー調査研究会(内閣府)委員。国内景気や株式市場のアノマリー分析に強い。著書に『
ジンクスで読む日本経済』など
取材・文/森田悦子