こうして、『いいちこ』発売前は売上3億、従業員8名だった三和酒類は売上600億、利益100億、従業員300名の一大メーカーへと躍進したのですが、そんな『いいちこ』を語る上で、開発や営業と並んで欠かせないのが、CMやポスター等の広告展開ですね。実は三和酒類には、宣伝部やマーケティング部、商品企画部などは存在せず、一連の商品企画や広告戦略は全て、アートディレクターの河北秀也氏が
一手に取り仕切っており、CMの企画、演出、編集、そしてナレーションまでも同氏によるものであり、同氏は「『いいちこ』は広告をしてきたのではない。デザインをしてきたからここまできたのだ」と語っています。ちなみに、河北氏は我々が今も当然のように目にしている、
地下鉄路線図も74年にデザインした一流のクリエイターです。
ポスターは、本格焼酎の古いイメージを払拭する爽やかさを出すものとして、広告イメージの中心にいいちこのボトルが置かれ、ロゴもローマ字をベースにした物を採用され、
現在に至るまでイメージが定着しています。TVCMは1986年から年一回ずつ制作され、CMソングは1987年の『時は今、君の中』以降ビリーバンバン(1992年までは菅原進単独)が歌う曲が
一貫して使われてきており、外国の大自然や田園などの静かな風景とビリーバンバンの歌が独特のイメージを確立し、これまた
印象に残るCMとなっていますね。
ちなみに、彼らを起用した理由にも深い意図があったのかと思ったのですが、こちらは当時の社長がビリーバンバンのファンだったためだという、割とほんわかしたものでした。また、2009年からは新たに発売された『いいちこ日田全麹』のCMが登場、従来の『いいちこ』のCMと並行して2種類が流れており、『日田全麹』のCM映像は『いいちこ』とはいわば正反対に、和を思わせる空間に的場浩司演じる
武士風の人物が登場するシリーズとなっています。なお『日田全麹』のCMソングで『いいちこ』で使われたビリーバンバンの『また君に恋してる』を演歌歌手の坂本冬美がカバーしたものが使用され、最近の演歌としては記録的なヒットを飛ばしています。なお、かの王国の
田村ゆかりが同社に勤めていたとの情報もあったのですが、
こちらを見る限りOL時代の取引先が取り扱っていただけみたいですね。
第58期決算公告:11月9日官報31頁より
売上高:477億3800万円
経常利益:70億500万円
当期純利益:45億8900万円
利益剰余金:885億2900万円
過去の決算情報詳しくは
こちら http://nokizal.com/company/show/id/1597376#flst