しかも、次の買いサインが点灯したのは株価が底に近い’09年1月という精度の高さだ。景気ウォッチャー投資法は長期的に下落する相場や横ばいトレンドでも、途中の変動を利益にできる可能性の高い投資だという。ただし、売買サインは年1~2回しか点灯しないので、長く持ち続けられる資金で行うことが重要だ。
「景気ウォッチャー調査は、特に中小企業(中小型株)や小売業との連動性が高い。このため、小売業の株価変動に連動する『TOPIX17(小売り)』を投資対象にしてもいいでしょう」(同)
機械的な売買だけでなく、個別株投資やビジネスにも役立てられると宅森氏は明かす。
「指数自体は5段階評価の集計結果ですが、その際、景気判断の理由もコメントしてくれるので、個別の業種や地域の景気実感が読み取れます。これが景気や企業業績予測のヒントになるのです」
今年最初の買いサインが点灯した7月調査を見てみても、「建設会社に見積もり依頼をしたところ、現場がフル稼働で新規案件を断っているとのこと(北海道・建設業従業員)」、「閑散期だというのに平年並み以上の受注が続いている(北関東・人材派遣会社支社長)」、「梅雨明けした途端に深夜の街に人がどっと繰り出し、それ以前の景気の悪さを払しょくしている(東京・タクシー運転手)」、「暑い日が続き、ペットボトルの飲料水やアイスクリームの売り上げ増加が顕著(東海・スーパー店員)」、「熊本地震以降受注が伸びている。4月に比べ倍増の見込み(九州・住宅販売会社従業員)」など興味深いコメントが並ぶ。
これらのコメントや調査結果は、内閣府のサイトで誰でも見ることが可能だ。景気ウォッチャー調査が会社四季報と並ぶ株式投資のバイブルとなる日は近いかも!?
1:現状判断DIが前月から1.0ポイント以上改善し、先行き判断DIも改善したら、「買い」サイン
2:現状判断DIが前月から1.0ポイント以上悪化し、先行き判断DIも悪化したら、「売り」サイン
※先行き判断DIの改善幅、悪化幅は問わない
※現状判断DIと先行き判断DIは季節調整値を使用
日経225連動型上場投資信託(東証ETF・1321)
日経平均株価に連動するETFのなかでも取引量が多く、投資しやすい銘柄。日経平均に採用される225銘柄に分散投資できる。一口1万7000円程度と、少額からの投資が可能。信用口座があれば空売りすることも可能だ
NEXT FUNDS 小売<TOPIX-17>上場投信(東証ETF・1630)
東証業種別株価指数の「小売」に連動するETF。内需や小売業との連動性が高い景気ウォッチャー調査と相性が良く、日経平均よりも高い利益が期待できる。セブン&アイHD、イオン、ファーストリテイリングなどが含まれる
【宅森昭吉氏】
三井住友アセットマネジメント。ESP景気フォーキャスト調査委員会委員、景気ウォッチャー調査研究会(内閣府)委員。国内景気や株式市場のアノマリー分析に強い。著書に『
ジンクスで読む日本経済』など。’12年4月より現職
【野田聖二氏】
エコノミスト。埼玉銀行(現りそな銀行)行員、あさひ投資顧問チーフ・エコノミストを歴任。その後日興コーディアル証券を経て独立。著書に『
景気ウォッチャー投資法入門』。ブログ「私の相場観」
取材・文/森田悦子 イラスト/小田原ドラゴン 図版/松崎芳則(ミューズグラフィック)