ERGの観測機器の一部。この機器は磁場を計測するもので、衛星本体が出す磁場の影響を受けないよう、宇宙空間で5mほど伸び、本体から離される
ERGによる観測は、長年の謎だったヴァン・アレン帯が形成されるメカニズムの解明につながることが期待されている他、磁場をもつ他の惑星や天体における高エネルギー粒子のふるまいの研究にも応用できると期待されている。
また、強い放射線の中でも活動できる衛星の技術は、同じく強い放射線環境をもつ木星へ向かう探査機の開発にも役立つ。
さらに、前述のようにヴァン・アレン帯に存在する放射線は人工衛星や宇宙ステーションに影響するため、ヴァン・アレン帯の状態を予想することが重要となる。そうした予想は、地球の雨や風を予想する天気予報になぞらえて「宇宙天気予報」とも呼ばれており、日本を含め世界中が精度の向上に努めており、ERGの観測もまた、宇宙天気予報の精度向上に貢献することが期待されている。
ヴァン・アレン帯発見以来の謎を解き、世界第一級の科学成果を出すことを目指し、そして私たちの生活や、将来の人類の宇宙進出にとっても重要な役割を果たすERGの活躍に期待したい。
ERGは小型の衛星だが、黒いボディが精悍な印象を与える
<取材・文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。
Webサイト:
http://kosmograd.info/about/
【参考】
・ISAS | ジオスペース探査衛星(ERG) / 科学衛星(
http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/erg/)
・ISAS | ジオスペース探査衛星 ERGプロジェクト/宇宙科学の最前線(
http://www.isas.jaxa.jp/j/forefront/2013/takashima_miyoshi/index.shtml)
・ISAS | ジオスペース最高エネルギー 粒子誕生の謎を追う 放射線帯の研究 / 宇宙科学の最前線(
http://www.isas.jaxa.jp/j/forefront/2006/miyoshi/index.shtml)
・ISAS | 小型衛星ERGによるジオスペース探査 / 将来計画(
http://www.isas.jaxa.jp/j/special/2005/plan/17.shtml)
・放射線帯50のなぜ
(
http://www.isee.nagoya-u.ac.jp/pub/naze/housha.pdf)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。
著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。
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