「子ども手当分を防衛費にそっくり回せば軍事費も国際基準に近づく」と発言した稲田朋美防衛大臣(参議院インターネット中継より)
シベリア鉄道の北海道延伸が日露間で協議されたという。実にロマンのある話だ。しかしなかなか実現は難しい。何よりもまず、日本とロシアでは軌間(線路の幅)が違う。同じ列車は走れない。
実はこの「ロシアと日本の軌間の違い」、明治末年に日本を二分する大論争の引き金を引いた歴史を持つ。
日露戦争の結果、日本はロシアから満州の鉄道を引き継いだ。しかし日本の在来線とは軌間が違う。これでは物流が繋がらないと、満鉄総裁に就任した後藤新平が「しばらく新規の鉄道延伸を止めてでも、日本の線路の幅を満州の線路の幅に合わせて改造すべきだ」という改主建従論を展開。これに「国家全体の経済発展のためには全国に鉄道を巡らすことの方が先決だ」という建主改従論で原敬率いる立憲政友会が対抗した。この改主建従と建主改従の論争は数年に渡って帝国議会で激しい対立を生むこととなる。
紆余曲折あって、帝国議会の論争は建主改従が勝利を納めた。鉄道が延伸されれば自分の選挙区への利益誘導となるため、立憲政友会の政治家たちが必死に建主改従運動を展開したからだ。今も昔も政治家は利益誘導となると血眼になるものなのだろう。当時の新聞はそんな政治家の姿を「我田引鉄」と揶揄した。
確かに選挙区への利益誘導ばかりに必死になる政治家の姿は見苦しい。だがそれでも「自分の選挙区」という範囲に限って言えば、有権者の利益増大には繋がっている。しかし利益増大の範囲が「自分の選挙区」ではなく「自分の財布」となると大問題と言わざるを得ない。