結果的にそごう・西武の中小型店は収益が伸びなかったとされるものの、そごう・西武にとっては百貨店店舗から遠隔地の顧客獲得に繋がり、既存の大型百貨店への来店客を増やすことに繋がるほか、イトーヨーカドーとしては、百貨店で専売される高級品やこだわりの商品をスーパーマーケットやショッピングセンターでも販売することができるため、一定のメリットがあったと考えられる。
「そごう・西武武蔵小杉ショップ」。この店舗は今後も成長を見込まれる店舗として営業を続ける
その一方で、セブンアンドアイホールディングスは、2015年11月より百貨店を含むすべての店舗で取り扱っている主な商品を、インターネットで注文してイトーヨーカドーやセブンイレブンなどの系列各店舗の店舗で受け取ることができるという「オムニセブン」を開始した。これにより、百貨店の商品をわざわざ店頭に並べなくともオムニセブンの百貨店商品売場「e.デパート」で購入できるため、グループ内では採算性の低い「そごう・西武」の事業縮小(というより、セブンイレブン以外の小売事業縮小)の一環で、開設したばかりの殆どの中小店舗を閉鎖しても問題ない、という判断に至った可能性も考えられる。
しかし、従来の百貨店の顧客がこれを機に百貨店の商品をインターネットで購入することが増えるとは考えづらく、また、品揃えが限られる中小店舗こそが「オムニチャネルへの窓口」として機能していたという側面もあるため、結果的にそごう・西武の多くの顧客と事業の多様性が失われることになってしまった。
百貨店に設置されたオムニセブンの案内
先進国のなかでも、大手小売りのEC対応が遅れているとされる日本。セブンアンドアイホールディングスの事業計画では、2016年2月期に1,418億円だった「オムニセブン」の売上高を今後3年間で7倍にまで大きく増やす計画だ。
しかし、実店舗を極端に縮小することで、身近な実店舗が「セブンイレブン」のみになってしまったならば、百貨店の顧客になりうる層を「オムニセブン」の百貨店商品売場「e.デパート」へと誘導することができるかどうかは疑問である。こうしたかたちでEC事業の拡大を推し進めるセブンアイの経営姿勢は、果たして本当に将来を見据えたものであると言えるのであろうか。
なお、中小型店舗のうち、閉鎖する百貨店の代替店舗や、そごう・西武の中小店舗群のなかでは最も規模の大きい「そごう・西武 武蔵小杉」など3店舗は今後も営業を続ける。
閉鎖店舗の一覧はこちら(参照「都商研ニュース」:「
そごう・西武、中小10店舗を2017年夏までに閉鎖へ-仙台泉、葛西、上田、松本など」)を参照。
<取材・文・撮影/都市商業研究所>
【都市商業研究所】
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