『君の名は。』『シン・ゴジラ』ヒットに沸く東宝。それでも売上への影響は数%?

 松竹や東映をしのぎ映画業界最大手の東宝の’15年期の年間売上高は約2300億円、営業利益は407億円だ。  前述したような『シン・ゴジラ』『君の名は。』といった大ヒット作が生まれても、せいぜい興行成績は100億円程度であり、年間売上高に比して、5%弱を占めるにすぎない。  ヒット作を生み出すと、地上波で繰り返し再放送されるようになるが、この収入も実はさほど大きくない。全作品を含めた昨年度のテレビ放映収入はたったの17.6億円だ。

高い収益率を誇る東宝の不動産事業

 そもそも東宝の年間売上高の内訳を見てみると、映画事業全体で1513.6億円、演劇事業で107億円、不動産事業で621億円、ダンスホール経営などのその他事業で9.7億円となっている(余談だが筆者はかつて大学の部活で競技ダンスをしており、東宝ダンスホールにはよく通っていた。鶯谷のホテル街にあり一見妖しい雰囲気を放っているが、館内は平日でもダンサーたちで賑わっている)  なかでも不動産事業は高い収益性を誇り、営業利益は178.9億円と、全体の4割近くを占めている。3900億円もの東宝の総資産のうち土地や建物などの固定資産が1500億円以上もあり最大の資産となっている。これが毎年莫大なキャッシュを生み続けているのだ。

東宝の過去3年の総資産内訳

 ちなみに銀行借入は3億円弱しかなく、実質的に無借金経営と言える。保有する不動産で手堅くしっかり稼ぐ構造はテレビ放送におけるキー局、新聞社や大手出版社と同じだ。
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「映画事業」の特異性
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