「東京五輪までに環状2号線開通を」との“呪縛”から解き放たれた
築地関係者と面談する小池都知事
知事が移転延期決定に踏み切った大きな要因として、“五輪道路”とも呼ばれる環状2号線開通を絶対視しなかったことがあげられる。「予定通り開場すべき」と主張する都庁担当者や都議ら移転推進派は、「2020年の東京五輪までに選手村と都心部を結ぶ『環状2号線』の開通が間に合わなくなる」という“殺し文句”で移転延期を封じ込めてきた。しかし知事はこれを鵜呑みにせず、「複数の代替案が考えられる」という結論に至ったと考えられる。
知事は環状2号線についてこう説明した。
「工事のあり方についても(市場問題PTで)しっかりと検討し、PTのこれからの精査、分析を持って、A案、B案、C案を持つのも一つの方法ではないかと思っております」
知事が思い描いている案の一つが、「環状2号線暫定道路案」と考えられる。8月27日の『日本経済新聞』には、環状2号線の開通遅れ問題について「『年内に開通する迂回路で代替すれば』。小池知事やその周辺からはこうした質問が都幹部に飛ぶ」とあるが、この中の「迂回路」こそ、築地市場の端を通る「暫定道路」のことだ。
環状2号線建設工事は二段階で、まず築地市場の端を通る「暫定道路(迂回路)」を作り、次に市場全体を解体してから「本道路(地下トンネルや喚起溝)」を建設する。暫定道路で五輪対応ができれば築地市場の解体を急ぐ必要はなくなり、市場の大半を残して営業継続をすることも可能になる。今回、知事が3か月以上の移転延期に踏み切ったのは「暫定道路で五輪対応できる」と判断したと考えられる。
環状2号線開通の“呪縛”から解き放たれた知事には、数か月をかけて建設費高騰などを徹底検証する時間的余裕ができた。そして「市場問題PT」で、都庁幹部や都議らの癒着や利権や不正行為を明らかにしていけば攻守は逆転、都政の主導権を知事が握ることになるに違いない。この日の移転延期会見は、都庁幹部や自民党都議に対する“宣戦布告”でもあったのだ。
取材・文・撮影/横田 一(ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する主張をまとめた新刊
『黙って寝てはいられない』<小泉純一郎/談、吉原毅/編>に編集協力)