クサくないタクシー「ファブタク」運行開始。前代未聞の大規模サービスの狙いとは?

 残業や接待が長引き、ついつい終電を逃してしまう――。多忙なサラリーマンであれば、誰でも一度はそんな経験をしたことがあるはず。  そんなとき、乗車したタクシー車内から、前の乗客のクサい残り香が漂ってくることほど最悪な経験はない。  汗や体臭、女性モノの香水、食べ物のニオイ……。ハードワークでクタクタなっている最中、そんなタクシーに出くわしたら、ますます疲労が溜まってしまいそうだ。  そんなクサいタクシーを「脱・ニオイ化」するために始まったのが業界大手の日本交通と、P&Gによる共同サービス「ファブタク」。クルマ用ファブリーズを搭載し、車内のニオイを消臭したタクシー「ファブタク」1万3500台が、9月29日までの期間限定で全国を走行。スマホアプリ「全国タクシー」を使えば、「ファブタク」を選んで乗車することもできる。  先月30日にはその出発式が日本交通の赤羽営業所で開かれ、タクシーに車専用消臭芳香剤「ファブリーズ クルマ イージークリップ」を搭載するほか、乗務員が乗車前に服のニオイチェックをするなどといった「ニオイ対策7箇条」が発表された。

日本交通・会長の川鍋一朗氏(左)と、P&Gの伊東正明氏(右)

 この斬新な試みについて、P&Gホームケア アジアパシフィック ヴァイス プレジデントの伊東正明氏に話を伺った。 「快適な移動空間を追求し続ける日本交通様と、『クルマ用ファブリーズ』の“全ての車内の快適空間を実現したい”という想いが合致し、この取り組みは始まりました。前例のないことにもかかわらず、私自身も驚くほどのスピードで、日本交通様とこの取り組みを実現させることができました」  昨年12月には試験的に限定2000台で実施された。反響はすさまじく、「タクシーのニオイ対策に対する要望がある程度、高いとは思っていましたが、正直に申し上げて、ここまでとは予想していませんでした」と伊東氏も語るほどだった。

「ファブタク」への意気込みを語る、P&G伊東氏

 そんなファブタクを今年は規模を拡大し、1万3500台で実施。1日に20~30人が乗車するとして、実施期間(31日間)を通して、およそ1000万人の乗車が想定される。 「1000万といった人数単位で、商品経験をしてもらうサンプリングは世界の『ファブリーズ』でも、私の知る限り、初めての試みだと思います。また、P&G社内でも群を抜いて大きい規模になっています」  当然、今後のビジネス展開も予測される。伊東氏も「車用ファブリーズは、現在、車専用消臭芳香剤カテゴリーでNo.1のシェアを誇る商品ですが、使ってみたことないから買わないという人もまだまだ多い。これだけの規模でやれば、結果にもつながると思います」と、その期待を隠さない。 「今後については、まずは日本交通さんに相談しながらです。この取り組みをやってみて、お客様の反響やビジネス結果など総合的に考え、お互いにやりたいとなれば、継続することになります。できれば継続したいとは思っています。  また、私がインド以外のオーストラリアや中国などを含めたアジアの担当をしているので、アジア各国のファブリーズの担当者にも今回のキャンペーンの説明をしています。『こういう取り組みを今、日本でやっている』と言うと、興味津々でした。アメリカやヨーロッパも可能性はあると思うので、少しずつ広がってくれれば理想的ですね」  日本発の「クサくないタクシー」が世界中の都市を走り回る。そんな光景が訪れる日もそう遠くはない!? ※注:スマホアプリ「全国タクシー」でファブタクを指定配車できるのは、日本交通グループのみ <取材・文/HBO取材班> ■ファブタク 提供:P&G