実際、ここ数年の研究により、「汚い部屋の良い面」は大きく見直されてきました。
なかでも代表的なのは、2013年にミネソタ大学が行った実験です(1)。研究者は48人の男女を集め、全員を2つのグループにわけました。
1.汚い部屋に入れる
2.片付いた部屋に入れる
そのうえで、みんなに「ピンポン球の新しい使い方を考えてください」と指示したところ、結果は汚部屋グループの圧勝でした。散らかった机で作業をした参加者のほうが、オリジナリティが高いアイデアを思いつく確率が5倍も高かったのです。
この結果について、コロンビアビジネススクールのエリック・アブラハムソン教授は、こうコメントしています。
「よいアイデアは、まったく違う要素が組み合わさって生まれる。システムのなかに散らかった要素を残しておくと、新しい組み合わせが生まれやすくなるのだ。もし、すべての工具をちゃんと工具入れにしまいこみ、すべての調理器具をキッチンに片付けていたら、調理器具を工具として使うアイデアなど思いつくはずがない」
新鮮なアイデアを思いつくには、ある程度の乱雑さは欠かせません。何もなくてキレイに整った環境にいると、わたしたちの脳は、古い思考から抜け出せなくなってしまうようなのです。
さらに、2012年にフローニンゲン大学が発表した論文でも、似たような結果が出ています(2)。
このなかで研究チームは、参加者に「散らかった部屋」や「汚いコンビニ」といったさまざまな環境を用意。そのうえで、全員の問題解決の能力や思考のパターンに違いが出るかどうかをチェックしました。
その結果は、やはり汚部屋の勝利。汚い環境に身を置いた参加者のほうが、シンプルで効率のよい解決策を思いつく確率が高かったのです。