「未来の農業を担うのは若者と企業」。“地方創生の雄”兵庫県養父市トップに聞く、日本復活の鍵
2016.08.24
アベノミクスの大きな柱のひとつとして大々的に掲げられた「地方創生」。安倍内閣の再改造によって、再びその行方が注視されている。今回、地方創生の雄として注目されている兵庫県養父(やぶ)市に足を運び、広瀬栄市長と三野昌二元副市長を訪ねた。
もともと、養父市は他の地方自治体同様、少子高齢化や地元産業の衰退に悩んでいた。’08年に当選した広瀬市長は、’10年の国勢調査で弾き出された約1700の自治体の人口減少率を調べて、「愕然とした」と語る。養父市の人口減少率は6%を少し超える程度だったが、10~15%の自治体が全体の約1割を占め、中には30%を超える自治体すらあったのだ。
「人口減少率が10%以上の自治体の中には、総務省や農林水産省から地方再生のモデルとして称賛されているような市町村が綺羅星のごとく並んでいました」(広瀬市長)
「従来の政策ではダメだ」。そう強い危機感を覚えた広瀬市長が目をつけたのは、農地制度の改革だった。農業従事者の高齢化により耕作放棄地が増加し、農村のコミュニティも消えかかっている。この課題を解決するためには後継者を集めてこなければならない。
「農業の新たな担い手候補として考えられるのは、都市の『農業をやってみたい』という若者と産業として農業に携わりたいと考えている企業です。しかし、現在の農地法では『農地所有者こそが農家であり、農家でなければ農業をすることはできない』と定められています。
制定された70年前はそれでよかったでしょうが、今は状況が違います。まずは農地制度を変え、環境づくりをしっかりとすることで、雇用も生まれて一石二鳥、三鳥になります」(広瀬市長)
養父市は、人口2万6000人程度の小さな自治体でありながら、’14年に“規制改革の切り札”とされる「国家戦略特区」に指定され、なおかつ今年4月に行われた諮問会議で特区中唯一「課題なし」という最高の評価を受けているのだ。
国家戦略特区とは産業の国際競争力の強化および、経済活動の拠点形成に関する施策の推進を目的とした特別区域のこと。既存の枠を破り、規制改革を行っていくことができる。東京圏、関西圏、沖縄県、福岡市という、そうそうたる大都市が特区として並ぶなか、総面積の約84%を山林が占め、すぐ目の前に田んぼや緑あふれる山々といったのどかな風景が広がる「古き良き田舎」が、なぜ一目置かれているのだろうか。
「市の抱える問題を解決するために、基幹産業であった農業を根本から変えていこうという姿勢が、国の方針とうまく合致したのではないでしょうか。とはいえ、特区の目的は『グローバルな経済活性化』なので、最後までわが町が選ばれるとは思っていませんでした。決まったときには市民ともどもビックリしましたね」(広瀬市長)
広瀬市長の言う通り、養父市は“農業の改革拠点”という位置づけがなされている。壮大な経済改革の実験場として白羽の矢が立てられたわけだ。
しかし、地域を変えていこうともがく自治体は他にも星の数ほどあるはず。謎を解く鍵は養父を知り尽くす市長と、三顧の礼をもって民間から招かれた元副市長との二頭体制にあった。
「従来の政策ではダメだ」
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