「未来の農業を担うのは若者と企業」。“地方創生の雄”兵庫県養父市トップに聞く、日本復活の鍵

既存の農業を覆す歴史的な一歩に

養父市市長の広瀬栄氏

 広瀬市長は、新たな政策づくりの右腕として、民間企業出身の三野昌二氏を副市長に迎え入れた。三野氏は養父市の金融機関から依頼を受け、トライセクター・リーダーとしてコンサルティングを行っていた経営コンサルタントだ。  32年間、観光業界に身を置き、「ハウステンボス」の再建にも関わった実力派。副市長に就任した三野氏は、養父市が100%出資する地域おこし会社「やぶパートナーズ株式会社」の経営や地域おこし協力隊のマネジメントも求められている。  こうして、広瀬市長と三野氏それぞれが「行政」「産業振興」における立役者となり、国家戦略特区指定を機に改革を進めてきた。まず、行政の面で重要な政策として、主に以下の3つがある。  1つ目は「農地の権限移譲、所有権移転」。従来は地元の農業委員会が農地の権利移動等に関する権限を持っていた。しかし、養父市では市長にその権限を委譲している。そのほうが新たに農業を始めるにあたって手続きがスムーズだからだ。結果として、農地の流動化面積も増えているという。  2つ目は「融資における信用保証制度の農業への適用」。通常、企業は信用保証協会による保証を受けることで融資を増額させるが、農業はその対象になっていなかった。そこで、養父市では農業を信用保証の対象にするよう中小企業庁に申し入れたのだ。これまでに信用保証が適用された事業は6事業、融資金額はトータルで9000万円、このことにより生じた新たな雇用は12名にのぼっている。  3つ目は「農業生産法人における企業の出資比率の引き上げ」。今年4月に施行された農地法改正法では、農地を所有できるのは企業の出資比率が50%未満の「農業生産法人」とされているが、養父市ではさらなる条件緩和を求めていた。その動きが功を奏し、6月、「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律」が公布され、全国で養父市に限り、企業が農地を所有できるようになったのだ。 「この特区改正法案は、5月27日に参議院で可決されました。ですから、私はいつもその日、日本で歴史に残る事件が2つあったと申し上げています。1つはオバマ大統領の広島訪問。そしてもう1つが、改正法案が参議院を通過したことです。『農家しか農地を所有することができない』という既存の農業を覆す、小さくて大きな第一歩だと考えているんです」(広瀬市長)  こうした農業規制の緩和によって、企業と地元の農家が連携し、花やはちみつ、ニンニク、米といった農産物に付加価値をつけて大都市で販売するようになっている。現在のところ、参入している企業は2年間で11社。養父市が発足してからというもの、企業誘致を進めても10年間で4社しか参入してこなかったことを考えると、「ゆっくりとだが、着実に効果は出てきている」と、広瀬市長は語る。  では、改革のもうひとつの柱とも言うべき「産業振興」のほうはどうなのか。次回、三野氏が、地方活性化の常套手段としてしばしば挙げられる「地域循環」や「地産地消」という言葉に踊らされず、ビジネスとして地域経済を回していくための秘訣を明かす。 <取材・文/小泉ちはる>
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