木村拓哉、覚悟の名言――「チームを崩壊させた」という評価に人はいかに立ち向かうべきか?
2016.08.19
【石原壮一郎の名言に訊け】~木村拓哉
Q:長く携わってきたプロジェクトチームが、メンバーの感情のもつれで空中分解してしまった。自分としてはチームや会社のために、よかれと思っていろいろやってきたつもりだったが、溝は深まる一方だった。社内では、俺が原因でチームが崩壊したと言われているようだ。メンバーに俺の気持ちをわかってもらえなかったことも、そんなふうに戦犯扱いされているのも、悔しくて仕方がない。どうすればいいのか。(東京都・36歳・商社)
A:そういうことって、ありますよね。人間関係はつくづく難しいし、世間というのは本当に好き勝手なことを言います。あの国民的アイドルグループの解散も、誰がどう言ったとか誰が誰の味方だとか、いろんなところからいろんな情報が出てきて、何がどうなっているのかわけがわかりません。当人たちも、よくわからないのではないでしょうか。
それはさておき、あなたの相談ですね。あれこれ頑張ったけどチームは崩壊してしまった。しかも、社内で戦犯扱いされている。冷たい言い方ですが、どちらも仕方ありません。崩壊したものは元には戻らないし、自分なりにせいいっぱいやったのなら、残念ですが現実を受け入れましょう。社内での戦犯扱いは、ムキになって打ち消せば打ち消すほど逆効果だし、そもそもみんなすぐに忘れます。知らんぷりして、堂々と振る舞っていれば大丈夫です。
メンバーの気持ちも周囲の無責任な噂も、自分でコントロールできる問題ではありません。あなたにコントロールできるのは、不本意な結果を自分自身がどう受け入れるかだけです。この流れで登場してもらうのはまったくの偶然で他意はありませんけど、あの木村拓哉は20年以上前にこう言いました。
「ケンカして別れるのも成長じゃないですか。時間がたつってことは、何らかの形で成長してることだと思う。太るのもやせるのも成長だし、老いていくことも成長だし」
起きてしまったことは、強引にプラスにとらえてしまうのが大人の心意気です。苦い経験や失敗を「成長の糧」にできるかどうかは、自分のとらえ方次第。そしてそれは、けっして難しいことではありません。時間は巻き戻すことはできないので、どんなことも自動的にだんだんと遠い過去の出来事になり、結果的に「成長の糧」になってくれた気がしてきます。
たまに「あれさえなければ……」と、過去の呪縛がいつまでも付いて回るケースもありますが、それは今の自分のダメさを過去のせいにする必要があるから。そんなみっともない状況に陥らないためにも、胸を張って堂々と再スタートを切りましょう。たしかに、今回のことで評価を下げた部分はあるだろうし、離れていく人もいたでしょうけど、それ以上にたくさんのことを学べて、自分を信じてくれる本当の味方の存在にも気づけたはずです。
1月の解散騒動のときに『SMAP×SMAP』の中で行なわれた謝罪会見で、木村拓哉はこう言いました。「これから自分たちは、何があっても前を見て、ただ前を見て進みたいと思いますので、みなさん、よろしくお願いいたします」。解散という結果になり、5人が同じ方向を見て進むことはなくなりました。ただ、これからもひとりひとりが前を向いて進んでいくしかないのは、木村拓哉もほかのメンバーも、相談者のあなたも私たちも同じです。
※草なぎのなぎは弓ヘンに前の旧字体その下に刀。……あっ、ここには彼は登場していないから、この注釈は必要ないですね。
【今回の大人メソッド】
過去の出来事に縛られていてもいいことはありません。反省すべきところは反省するとして、距離を置いて付き合いましょう。そして芸能ゴシップにせよ身近な話にせよ、他人のいざこざに深く興味を持ってもいいことはありません。聞こえてくる情報は、誰かが何かの目的で出したものばかりです。大人の節度を忘れず、適度な付き合い方を心がけましょう。
【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。
いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)
過去の出来事や他人のいざこざとは距離を置くべし
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