2011年、ルワンダで行われた被爆ピアノの演奏会に参加した矢川さん
被爆ピアノの演奏会は、北海道から沖縄まで、さらに米国やアフリカでも行われた。米国での演奏会前、矢川さんはオバマ米国大統領宛に「核兵器のない世界を目指すのなら、被爆ピアノを弾いてほしい」と、手紙を送った。
「何事も最初から諦めず、まずは行動してみないと始まらない」
昔は引っ込み思案だった矢川さんは、そう考える人になっていた。被爆ピアノを通して、一見古くて傷ついたピアノに心をきちんと震わせてくれる、子供や大人たちのみずみずしい感受性にも触れてきていた。広島出身の歌手である吉川晃司や原田真二、米国人ジャズ演奏家のハービー・ハンコックも被爆ピアノを演奏し、矢川さんの活動をたたえてくれた。
「その反面、被爆ピアノに触れた小中学生が、あの年頃の私なら絶対に書けなかった立派な感想文を送ってきてくれて、私は自分の心に巣食っている『どうせ子供だから……』という偏見が恥ずかしいと痛感したんです」(矢川さん)