日本人のほとんどが知らない中央アジアの基礎知識

中央アジアを占める「スタン」がつく国々

 中央アジア5ヶ国というと、一般にはかつてソ連を構成していた「スタン」のつく国々のことを指す。カザフスタンに始まりウズベキスタン、キルギスタン、タジキスタン、そしてトルクメニスタンだ。このなかに旧ソ連国家ではないパキスタンやアフガニスタンは含めない。この「スタン」という語はペルシア語で土地を意味するestan(エスターン)に由来する。つまりカザフ族の土地でカザフスタン、ウズベク族の土地でウズベキスタンということだ。  中央アジアの国々は、漢語で話す漢族が94%を占める中国などとは少数民族の事情がだいぶ異なる。中国語(北京官話)を解さない中国人はほぼいないが、カザフスタンではカザフ語をまったく話せないカザフスタン人が大勢いる。中央アジアではソビエト連邦樹立以来、伝統的に信仰されてきたイスラム教などは弾圧され急速に世俗化していった。ソ連は「他文化の尊重」という標語の下で、民族自決の原則に基づき、ついぞロシア語を標準化することは無かったが、中央アジア内での政教分離は進み、ロシア語話者も格段に増加していった。  ここでまず中央アジアの民族構成を理解するためにカザフスタンの例を挙げる。
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カザフスタンで特徴的なドイツ系と朝鮮系民族
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