’11年に史上最高値するも、’13年から低迷の時代に
さらに’09年にリーマンショックが起きると、アメリカのQEをはじめとする世界的な金融緩和によって莫大な流動性が金市場に注ぎ込まれ、’11年には中東情勢が不安定化した「アラブの春」、リーマン後から燻り続ける欧州のソブリンリスクを追い風に、9月には史上最高値の1923ドルに到達。「有事の金」の力を証明してみせた。ICBCスタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、当時を振り返る。
池水雄一氏
「あの頃は、アメリカをはじめ、世界中の国がお札をバンバン刷っていました。マネーの量が増えれば、当然その価値は下がり、投資家にすればお金じゃないものに資金を移動させたいと考える。そこでコモディティに資金が流入したわけですが、なかでも金にはそのもの自体に普遍的な価値がある。有史以来、金は重んじられ、腐ったり、物質として変化することもない。こうした特質を持つのは金だけなのです」
翌’12年、調整局面に入った金は1530~1800ドルのレンジ相場に突入したものの、高水準を維持していた。ところが’13 年、わずか2営業日で200ドルを超える大暴落に見舞われ、金は1360ドル台にまで値を下げたのだ。マーケット・ストラテジィ・インスティチュートの亀井幸一郎氏が、その背景を解説する。
亀井幸一郎氏
「’13年に金は大きく売られ、1年で26%もの下げ幅を記録しました。ここから金の苦難の歴史が始まった……。’13年に大きく下げた原因は、同年5月、アメリカがそれまで続けていた空前の規模の量的緩和策を『そろそろやめようか』と、バーナンキFRB議長が言い始めたから。実際にQE3が終了したのは’14 年11月でしたが、『やめようか』と米当局が口にしただけで大きく下げたのです。金相場は、先食いによって先行して動くんですね。その後、相場はまた下落し、直近での安値は昨年の12月3日の1045ドル。原因は、同月16日に発表されたアメリカの利上げです。つまり、ここでも発表に先行して金は下げたわけです」