そのある国とは、スペインである。
前出したトーマス・クックは〈トルコ訪問をキャンセルしたお客の多くがスペイン訪問に変更した〉と述べ、目的地の変更先として〈カナリア諸島、バレアレス諸島、地中海沿岸〉にチャータ便を向ける予定にしているという。
この潤いを最大に享受することになるのが地中海沿岸のリゾート地ネルハ、トレモリノス、ミハス、マルベーリャ、エステポナなどがあるコスタ・デル・ソルである。同地では〈350の宿泊先と88000個のベッドを用意〉しているが、〈客室稼働率は6月から9月まで78.5%になる〉ことを見込んでいるという。月ベースで見ると〈6月は75%、7月79%、8月85%、9月75%〉を予定しているという。
同様に地中海を代表するリゾート地としてバレンシア州のベニドルムも人気が上昇しており、〈5月に既に訪問客は105万人〉だという。
今年のスペインへの外人訪問者数は前年度の6810万人を超えて、7200万人になると推測されている。航空会社は観光シーズンの〈5月27日から10月29日までに1億8600万席を用意する〉という。
決して良くはないスペイン経済だが、GDPの12%を担うスペインの観光産業は今年も健在である。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。