希望か、それともペテンか!? イーロン・マスクの「ロケット再使用でコスト100分の1」を斬る

「コスト100分の1」は難しくとも、ロケットは安くなる

ファルコン9の打ち上げ Photo by SpaceX

 こうした理由から、ロケット再使用によるコスト100分の1の達成は非常に難しいと考えられる。しかし、ロケットを飛ばすのに必要なコストが、そして価格が、100分の1とまでは言わずとも、今より安価になることは十分に期待できる。  たとえば、スペースXのグウィン・ショットウェル社長は今年3月、「第1段の再使用によって、30%のコスト削減になる」と明らかにしている。もしこのコスト削減率が、そのまま価格にも還元されるのであれば、ファルコン9の価格は現在の6200万ドルから4340万ドルにまで下がることになる。  また、ロケットのコスト削減は、何も再使用ロケットでなくてはならない、というわけでもない。一般的に、ある製品の仕様や部品を規格化し、大量生産を行えるようにすれば、生産の効率が上がり、また品質も安定し、結果的に生産にかかるコストを下げることができる「量産効果」が期待できる。その代表例が自動車で、ロケットの世界でも、ロシアや中国がこの方法によって、使い捨てながら安価なロケットを供給している。  大量生産は生産すればするほど量産効果によるコスト削減が図れる。もちろん、今後、ロケットの打ち上げ需要がどれだけ増えるかによっても変わってくるため、使い捨てロケットの大量生産が優位になる場合もあれば、再使用ロケットが優位になる場合もあろう。  もっとも、どちらになるにせよ、スペースXにとってはどちらかに一本化する必要はない。再使用にそれほど旨味がないとわかれば、その段階でロケットから着陸脚などを取っ払い、使い捨てロケットにして、そして自動車のように大量生産できるようにすれば良い。  重要なことは、やり方はいろいろあれど、そしてコスト100分の1は厳しくとも、ロケットのコスト、価格が、今より大きく安価になる未来が迫りつつあるということである。それだけでも、宇宙開発にとって革命にも等しい出来事になることは間違いない。 <文/鳥嶋真也> とりしま・しんや●宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。 Webサイト: http://kosmograd.info/about/ 【参考】 ・Reusability: The Key to Making Human Life Multi-Planetary | SpaceX(http://www.spacex.com/news/2013/03/31/reusability-key-making-human-life-multi-planetary) ・Musk Outlines Plans for Fully Reusable Falcon Rockets at Parabolic Arc(http://www.parabolicarc.com/2012/02/08/musk-outlines-plans-for-fully-reusable-falcon-rockets/) ・Liveblogging Tech Renaissance Man Elon Musk at D11 – Liz Gannes – D11 – AllThingsD(http://allthingsd.com/20130529/coming-up-tech-renaissance-man-elon-musk-at-d11/) ・SpaceX says reusable stage could cut prices 30 percent, plans November Falcon Heavy debut – SpaceNews.com(http://spacenews.com/spacex-says-reusable-stage-could-cut-prices-by-30-plans-first-falcon-heavy-in-november/) ・Capabilities & Services | SpaceX(http://www.spacex.com/about/capabilities
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。 Webサイト: КОСМОГРАД Twitter: @Kosmograd_Info
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