釈明・お詫びに「流暢な説明」はむしろ身を滅ぼすことになる!

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第8回】

流暢な説明が騒動を長引かせる

 釈明会見、お詫び会見が、日をおかずしてメディアを賑わしている。「人の噂も75日」と言うが、騒動を長引かせてしまうケースには、事の大小はもちろんのこと、当事者自身のコミュニケーションの仕方に、“ひとつの特徴が”あることがわかってきた。それは、「立て板に水のごとく応酬している」ということである。 「相手の家族に申し訳ないと思わないのですか?」―(間をおかず)「それは、もう、申し訳なく思います」 「進退については、どうお考えですか」―(即座に)「生まれ変わった気持ちで、職務をまっとうさせていただき、責任を果たさせていただきます」  記者から質問されれば、間をおかず、すぐに答える。このような会見を耳にすると、この騒動も長引くかと思わざるを得ない。 「立て板に水の如く話すことは、良い喩えではないか。何が悪いのか?」という声が聞こえてきそうだ。実は、悪いのだ。  次のような事例もある。朝の駅前での政治家の該当演説。トップを争うと目される2人の政治家が日毎入れ替わり演説をしている。方や、流れるようにスラスラと演説をしている。もう一方は、ひと言話すごとに、ひと休みして、かなり時間をかけながら話している。  観察していると、前者の流暢な演説に対しては、駅へ急ぐ人は見向きもしない。しかし、後者の朴徳な話に対しては、道行く人が見ていたり、歩調を緩めたりしているではないか。良く見ると、後者の政治家は、ひと言話す毎に、駅へ急ぐ人を見つめて、うなずいている。それにつられて、見つめられた人も、目を向けたり、目でうなずきを返したりしている。そして、次のひと言は、また、別の人を見つめて、うなずくことを繰り返していたのだ。
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立て板に水の如き話が身を滅ぼす
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