「山本山」と「永谷園」の古い縁――江戸時代に遡る運命的出会いが老舗を育てた

ブラジルで日本茶を作って、ロサンゼルスでハーブを売る老舗

 こうしてあらためて見てみると、その後時代が移っても、冒頭に触れた通り、1947年にはもう一つの看板商品である海苔の取り扱いを開始したり「上から読んでも~」で積極的なブランディングを展開したり、と老舗とは思えないほど、時代の流れに合わせて積極的に事業を展開している山本山ですが、実は海外にも1970年代から進出していたりします。  その内容も、ブラジルで東京ドーム45個分もの面積の茶園を作ってお茶を生産する一方で、ロサンゼルスに現地法人を作り、アメリカ・ヨーロッパ・アジアの各国で健康飲料として注目されている日本茶をはじめ、中国茶・紅茶・ハーブティーの製造及び、世界中でブームとなっている寿司に使用される海苔の加工を行なうなど、垂直方向(生産)から水平方向(販路)まで、文字通りの縦横無尽感もあります。 第74期決算公告:6月3日官報38頁より 当期純損失:△2億6504万円 利益剰余金:63億3703万円 過去の決算情報:詳しくはこちら http://nokizal.com/company/show/id/1445569#flst  直近の決算を見ると、2年連続で3億円前後の赤字になっている山本山ですが、さすがに利益剰余金も63億円と積み上がっており、少々のことでは大丈夫そうです。また、物が売れないこの時代に、体力のあるうちに海外など次の時代に繋がる投資が出来ているのであれば、ただ座してシュリンクを待つような老舗よりは、よほど健全な可能性もあります。  あと、今回の内容を振り返ってみると、1738年に煎茶を売り出し、1835年に玉露を開発し、1947年に海苔の販売を開始した、山本山であれば、2030~40年くらいには何かまた画期的なことをやるのではないかと(笑)。創業300年以上の老舗らしい周期の新規展開に期待したいですね。 決算数字の留意事項 基本的に、当期純利益はその期の最終的な損益を、利益剰余金はその期までの累積黒字額or赤字額を示しています。ただし、当期純利益だけでは広告や設備等への投資状況や突発的な損益発生等の個別状況までは把握できないことがあります。また、利益剰余金に関しても、資本金に組み入れることも可能なので、それが少ないorマイナス=良くない状況、とはならないケースもありますので、企業の経営状況の判断基準の一つとしてご利用下さい。 【平野健児(ひらのけんじ)】 1980年京都生まれ、神戸大学文学部日本史科卒。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの『SiteStock』や無料家計簿アプリ『ReceReco』他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業、全国の企業情報(全上場企業3600社、非上場企業25000社以上の業績情報含む)を無料&会員登録不要で提供する、ビジネスマンや就活生向けのカジュアルな企業情報ダッシュボードアプリ『NOKIZAL(ノキザル)』を立ち上げ、運営中。
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