「山本山」と「永谷園」の古い縁――江戸時代に遡る運命的出会いが老舗を育てた

誰も認めなかった新商品のポテンシャルを見抜いた4代目の慧眼

 当時飲まれていた煎茶は、日干しで乾かした茶色い「黒茶」であり、味も良くありませんでした。それに対して、宗円が発明した煎茶は、お湯で茶葉を蒸した後に、焙炉と呼ばれる茶葉を乾燥させるための箱の上で茶葉を手揉することにより、美しい黄緑色と、適度の渋み、苦みに、旨味、甘味を実現した画期的なものでした。  そして、この茶葉の販路を開拓すべく、江戸を訪れた宗円でしたが、従来と全く違うこの茶葉の価値を評価してくれる茶商はおらず、最後に訪れたのが山本屋だったのです。上記の通り、その美味に感嘆した4代目は、その味を即座に認め、小判3枚で買い取り、翌年の購入も約束しました。  この煎茶に「天下一」と名付けて売り出すと、江戸そして、全国で圧倒的な人気を博し、山本屋は大きな評判と莫大な利益を挙げました。ちなみに、山本家は永谷家にお礼として、毎年小判25両を明治八年(1875年)まで贈り続けたというので、それがどれほど大きな商いに繋がったのか伺えます。

5代目、6代目も「狭山茶」「玉露」でお茶の歴史に名を刻む

 4代目の時に、永谷宗円とその煎茶との出会いにより大きな飛躍を遂げた山本屋でしたが、続く5代目、6代目も、日本茶の歴史に残る大きな業績を残しています。「古今稀な知恵の持ち主」と宇治の生産者達からも評された5代目でしたが、4代目と同じように、当時はマイナーな存在だった「狭山茶」を発掘して「霜の花」「雪の梅」と名付け積極的に販売、狭山茶は「静岡茶」「宇治茶」と並んで「日本三大茶」と称される存在になります。  逆に、6代目は生産側として、凄い仕事を成し遂げています。天保六年(1835年)に、宇治小倉郷の木下吉左衛門宅を製造に立ち会うために訪れた6代目は、製茶中の茶葉を露のように丸く焙ることを思いついて、やってみたところ甘露の味わいの絶品に仕上がることを発見します。これこそが、今日にも至る高級茶葉「玉露」でした。  このように、歴代の当主に恵まれた山本山は、4代目以降も更なる発展を遂げました。その繁盛ぶりは『江戸名物狂詩選』にある「買う者立ち並び客は市の如く、番頭手代少しも間無し、一時に売り出す三千斤、多く是れ自園の山本山」という記述からも相当なものだったことが想像できますね。
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ブラジルで日本茶を作って、ロサンゼルスでハーブを売る老舗
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