北朝鮮が育成する海外エリートたちの素顔

日本のアニメを楽しむ北朝鮮の留学生たち

 彼らは日本のアニメを楽しんだり、講義中にiPhoneやMacでゲームをして遊んだり、どこで買ったのやらブランド物でめかしこむ。しかし、こういう学生に限って器量が良く勉学もほどほど優秀で、自国の評価に対しても客観的かつ冷静だったりする。 このオープンな学生達は自国を悲観的に見てるわけでも、アメリカや日本に対して心酔しているわけでもない。彼らの中には日本語を趣味で学んでいる人もいれば、アメリカのロックバンドの曲をカラオケで歌うような人もいる。そうした光景をみると、来るべき市場開放に向けて文化を受け入れる素地が形成されているのだと思える。  以前、中国トップクラスの大学に通うネットゲーム中毒寸前の北朝鮮留学生は、次のように語った。 「はあ、君は良いなあ夢があって。俺は中国で外交官か貿易商にでもなるしかないから」  彼が本当にその手の職に就くのかはわからないが、こんなことを言った彼も自分の行く末を決して悲観したわけでなく、中国から朝鮮をずいぶん冷静に分析していた。金融学を専攻する彼は、自国である朝鮮をずいぶん冷静に分析していた。  朝鮮が資本主義とは異なる政治体制ゆえに銀行や外為制度が整えられておらず、その役割も中央銀行ではなく海外向けの投資銀行に集中していることを指摘。その構造を生かし、貨幣の電子化を朝鮮で導入する可能性を探りたいと言いながら、「とりあえずネットゲームは時間を無駄にするから、朝鮮では規制しなくてはならないな(笑)」と冗談めかして話していた。  エリート街道を歩む前者の学生達はきっと卒業後、自国の政府で良い役職につくと思われるが、北朝鮮が今後直面するであろう市場の開放に向けて大役を担うのは、こうした後者の人間たちなのかもしれない。 <取材・文/なかはた じゅん(TwitterID:@cider1d1l> 北京在住の大学生。日中朝英の4言語を操り、現在はロシア語の勉強中。中国にいる北朝鮮留学生や旧ソ連圏の人々と日々交流しながら、北朝鮮情勢の一端を考察している。
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