「1時間で会議を終わらせる」ための単純で簡単な4つの方法

押し付けを排除する会議運営

 なぜ、質問のスキルが合意形成に役立つのか? その答えは、明確です。すなわち、世の中で行われている会議が、結論を押し付けようとする会議が実に多いのだ。「この方針を参加者に認めさせよう」「この提案にメンバーを従わせよう」という意図が見え見えなのだ。  誰しも、押し売りは嫌いである。今どき、ほとんどのセールスパーソンは、ウリが入ると客が逃げるということを知っている。にもかかわらず、企業内の会議においては、その提案を通したい側のウリが入り、紛糾したり、見せかけの合意で終わったり、形式的な会議にとどまったりしてしまうのだ。  質問のスキルによる合意形成は、いわば、そのウリを排除したプロセスを実現するものだ。そして、ウリは得策ではないと説明しても、そのプロセスを解説しても、頭ではわかっても実際にどのように発言すればよいか、すぐにわかるはずがない。そこで、洗い上げ質問、掘り下げ質問、示唆質問、まとめの質問の各パーツに分解して、それを反復演習して、体で身に付ける。 「そもそも、発言が出るはずがない」「あらかじめ決められた結論へ誘導していかなければならないのに、質問していったら、その方向へ誘導できない」「論点の洗い上げをしたら、それだけで紛糾するに違いない」などの、懸念に接することもある。しかし、百聞は一見に如かず、習うより慣れろということで、まずは実施していただく。すると、驚くほど効果があることを実感していただけるのだ。  日本を代表するグローバル企業の研修に参加した役員も、わが国を代表する経済誌が主催するリーダーシップ研修に参加したメンバーも、分解スキル・反復演習型能力開発プログラムで、その質問のスキルを使いこなせるようになって、職場で活用し始めている。  私は、質問のスキルによる合意形成を含む、分解スキル・反復演習が、わが国のビジネスパーソンの能力を飛躍的に高め、企業の意思決定の速度と確度を高めるキーになるに違いないと確信している。 ※「質問による合意形成」のスキルは、山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)のドリル18で、セルフトレーニングできます。 <文/山口博 写真/kou・PIXTA> ※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。 【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。国内外金融機関、IT企業、製造業企業でトレーニング部長、人材開発部長、人事部長を経て、外資系コンサルティング会社ディレクター。分解スキル・反復演習型能力開発プログラムの普及に努める。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日経ビジネスセミナー講師(2016年)。日本ナレッジマネジメント学会会員。日経ビジネスオンライン「エグゼクティブのための10分間トレーニング」、KINZAI Financial Plan「クライアントを引き付けるナビゲーションスキルトレーニング」、ダイヤモンドオンライン「トンデモ人事部が会社を壊す」連載中。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。慶應義塾大学法学部卒業、サンパウロ大学法学部留学。長野県上田市出身
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