EU加盟国国民の間で高まる「反EU感情」。オランダ国民投票でEU・ウクライナ連合協定が反対多数

 ウクライナの国家形成は複雑でこの100年間に10回も国境が塗り替えられている。東部はもともとポーランドの支配下にあったが、西部は旧ロシア帝国の影響下にあった。そして西部にはロシア人が移住しロシア語を喋っていた。ソ連が崩壊したあとも、ウクライナの産業と農業はロシアに依存していた。しかし、共産体制からの脱皮を望む西部はポーランドなど近隣諸国がEUに加盟するのを見て、西部の政治指導層はEUへの接近を望むようになった。それがオレンジ革命へと繋がるのである。

EU加盟国国民の間で高まる反EU感情

 しかし、ウクライナ自体も既に国家として財政破綻している状態だ。〈インフレは43%、GDPは25%後退し、また今年1月からロシアに30億ドル(3450億円)の返済が出来ない〉状態が続いている。(参照:「El Confidencial」)  もしウクライナがEUに加盟したとすれば、ウクライナ問題の資金的な負担は今後もEUが続けて行かねばならなくなるであろう。  EUの政治指導者層がそれぞれ加盟国の国民の考えを無視してEUを拡大して来たつけがEU加盟国の国民の負担になっており、現在、EU加盟国国民の間では移民政策や経済政策への反感もあって、「反EU」感情が高まりを見せている。今回のオランダの国民投票も、「反EU」を計るメルクマールと見られていたこともあり、この結果はEUの指導者層にひとつの反省を求めるものになったのは間違いないだろう。 <文/白石和幸 photo by UP9 via WikimediaCommons
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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