「ちょっといいですか」が口癖のビジネスマンは大成しない!

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第4回】  年間100社から参加していただき、話法や事例を用いた演習を繰り返し実施していると、今日のビジネスパーソンのさまざまな傾向が見えてくる。例えば、トップセールスの人々の考え方や話法に共通項がみえてくるし、同僚と打ち解けやすい人のコミュニケーションの取り方などが浮き彫りになってくる。その一方で、同僚に疎んじられる人、部下や上司に敬遠される人にも、共通の傾向があることがわかってきた。

「ちょっといいですか」の諦観がビジネスを衰退させる

  顕著な傾向として今回取り上げるのが、「ちょっといいですか」症候群だ。「ちょっといいですか」症候群とは、部下が上司に話かけたい時の「ちょっといいですか」、上司が部下を呼び止めたい時の「ちょっといいかい」、顧客に声をかけたい時の「少しよろしいでしょうか」という、よく耳にするひと言を、言わずにおれない症候群である。  この「ちょっといいですか」を多用する人は、残念ながら周囲に疎んじられ、ビジネスパーソンとしては大成しない。「実際、多くの人が使っているではないか」、「ほとんど常套句になっているではないか」、「この話法の使い手がダメならば、日本のビジネスパーソンはほとんどダメということか」と意外に思われる人も多いのではないだろうか。そうなのだ。ダメなのだ。「ちょっといいですか」が普及して、放置されてしまっていることこそが、日本のビジネスパーソンの能力開発を妨げるといっても過言ではない。  例えば、とても忙しい時に、上司から「ちょっとー、いいかーい」と、その言葉とは裏腹に、有無を言わせぬ圧力で呼ばれた経験を、ほとんどの人がもっているに違いない。そして、その「ちょっと」が、30分や1時間になったり、一体何の話だったか収拾がつかなくなったり、自分に何を伝えたかったのかわからないといった結末となり、時間の浪費だと思えてしまうことがあるだろう。  そして、何度かそういう経験をしていると、「ちょっといいかい」と言われても、けっきょく何分時間をとればいいのか、何の話なのか、自分に何を期待しているのか、という疑念をもったまま、身構えて相手と向き合うことになる。そのうちに、諦めの感覚が高まり、「この忙しい時に」とか、「またか……」と不愉快な思いを感じながらも、いつのまにか、それを顔に出さずに、メモをもって上司の元へ駆けつける振る舞いを身に付けてしまう。それこそがビジネスパーソンとして成熟することだと、これも多くの人々が思っている。  私は、これが「間違い」だと言いたい。上司から部下へ、部下から上司へ、そして顧客へ、いずれの相手に対する「ちょっといいですか」も、一体どういう背景で、何の目的で、どのくらい時間が必要で、呼んだ相手に何を期待したいのか、まったくわからない。呼び止める人も、呼び止められる人も、諦めて放置してきた結果、ビジネスの時間の浪費と、ビジネスパーソンのエネルギーの減退に歯止めがかからなくなっている。冗談でなく、「ちょっといいですか」症候群が、日本のビジネスを停滞させたと言わざるを得ない。
次のページ
「ちょっといいですか」症候群は改善できる
1
2
【お知らせ】
この記事で紹介したスキルは、5月12日に山口博氏により開催される次の実演セミナーで修得することができます。奮ってご参加ください。

●扶桑社ファシリテーション講座
『チームを動かすファシリテーションのドリル』発売記念セミナー
柔軟思考とコミュニケーション力で組織強化する

⇒詳細はこちらから。(http://www.fusosha.co.jp/news/info/info_article/168)


チームを動かすファシリテーションのドリル

「1日1分30日」のセルフトレーニングで、会議をうまく誘導し、部下のモチベーションを自然にあげられる!

バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会