尋常ならざる我が国の言論状況――【シリーズ植村隆の闘い 第1回】

菅野完
「表現、報道、編集、そうした自由は極めて確保されている」——21日の記者会見で「国境なき記者団」が発表した「報道の自由ランキング」で、日本の順位が前年の61位からさらに後退し、180か国中72位と大幅に落ちていることを指摘された菅官房長官は、いささか憮然としながらこう答えた。
(参照「報道の自由『極めて確保』 菅氏、ランキング下落に反論」2016年4月22日『朝日新聞』)

 菅が憮然とするのは無理もないかもしれない。いかに有名とはいえ「国境なき記者団」は単なるNGO。彼らの出す勧告やランキングに何ら法的あるいは条約に基づいた拘束力はない。単なる一NGOが出す「ランキング」ごときに一喜一憂していては、国政など運営できぬだろう。菅としては「バカなことを聞くな」とでも言いたかったに違いない。

 だが、国連から「日本の表現の自由、大丈夫かね?」と疑義を呈されたとしたらどうだろう?

 19日、約一週間の調査を終え離日する国連「表現の自由」特別報告者のデビッド・ケイ氏は、ニュースリリースを発表した。
(“Preliminary observations by the United Nations Special Rapporteur on the right to freedom of opinion and expression, Mr. David Kaye at the end of his visit to Japan (12-19 April 2016)” 国連人権高等弁務官事務所サイトに掲出)

 一週間にわたる聞き取り調査の結果、「(日本の報道の自由を巡る懸念は)より深まった」とするケイ氏がこのニュースリリースで取り上げた問題は、放送法第4条や特定秘密保護法の改正、記者クラブの廃止、自民党改憲草案の懸念点など、かなり広範囲かつ具体的なものとなっている。

 氏の提言内容についての詳細については、他メディアの記事(例えば、「国連『表現の自由』特別報告者『懸念は深まった』記者クラブ廃止など提言【発言詳報】」 2016年04月20日『ハフィントンポスト』など)を参照いただくとして、本稿では、氏のニュースリリースの中で個人名を取り上げられた唯一のジャーナリスト、植村隆氏について注目したい。

次のページ 
国連までもが注目した植村氏へのハラスメント

1
2
3
日本会議の研究

「右傾化」の淵源はどこなのか?「日本会議」とは何なのか?

4
5
関連記事
6
7