ウイスキー自体の説明が少し長くなってしまいましたが、つまり、上記の2拠点が出来たことで、ニッカウヰスキーではブレンデッドウイスキーや、違ったタイプのモルトウイスキーの製造が可能になり、より本場のスコッチウイスキーのレベルに近付きました。あるいは、1社でモルトウイスキーとブレンデッドウイスキーをまかなうやり方は海外では珍しく「ジャパニーズウイスキー」としての進化とも言えます。
これらの成果として、1964年に日本初のモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしたウイスキー「ハイニッカ」1965年に2種類のウイスキー原酒をブレンドした「新ブラックニッカ」が発売され、大ヒットを記録します。ちなみに、1日1本のウイスキーを飲んだ政孝が、好んで飲んだのがこの「ハイニッカ」だったそうです。
第30期決算公告:3月17日官報61頁より
当期純利益:7億7700万円
利益剰余金:20億8700万円
過去の決算情報:詳しくは
こちら http://nokizal.com/company/show/id/1571385#flst
今では本場からも評価される「ジャパニーズウイスキー」
1979年に政孝は85歳でこの世を去りますが、ニッカウヰスキーはその後も高品質のウイスキー作りを続け、2002年に余市蒸留所が、2004年に宮城峡蒸留所が、世界最大のウイスキー愛好者団体SMWS(スコッチモルトウイスキー協会)から英国以外の蒸留所として初の認定を獲得。
2015年には「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ2015」にて優れた酒造メーカー1社のみに贈られる「
ディスティラー・オブ・ザ・イヤー」を獲得するなど、ジャパニーズウイスキーとして、今では本場からも評価されるようになっています。
なお、日本でウイスキーといえば、有名なサントリーの「
二本箸作戦」などもあって、かつては寿司屋や小料理屋のカウンターにもズラッとウイスキーが並ぶ時代もありましたが、それに関してはこんなエピソードがあります。
親類が政孝と寿司屋に行った時に、気を遣ってニッカのウイスキーを出そうとしたら「日本酒にしろ、食事にあった酒が一番いいんだ」と怒られ、その後クラブに行ってウイスキーを飲みながら、つまみをつまんだら「ウイスキーを飲む時は、何も食べるな」と怒られたそうです。いかにも「日本のウイスキーの父」らしいエピソードですね。
決算数字の留意事項
基本的に、当期純利益はその期の最終的な損益を、利益剰余金はその期までの累積黒字額or赤字額を示しています。ただし、当期純利益だけでは広告や設備等への投資状況や突発的な損益発生等の個別状況までは把握できないことがあります。また、利益剰余金に関しても、資本金に組み入れることも可能なので、それが少ないorマイナス=良くない状況、とはならないケースもありますので、企業の経営状況の判断基準の一つとしてご利用下さい。
【平野健児(ひらのけんじ)】
1980年京都生まれ、神戸大学文学部日本史科卒。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの『
SiteStock』や無料家計簿アプリ『
ReceReco』他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業、全国の企業情報(全上場企業3600社、非上場企業25000社以上の業績情報含む)を無料&会員登録不要で提供する、ビジネスマンや就活生向けのカジュアルな企業情報ダッシュボードアプリ『
NOKIZAL(ノキザル)』を立ち上げ、運営中。
<写真/
克年 三沢>