3つ目は、今回のリークには米国にとって不都合な世界の元首の瓦解を狙う目的があるのではないかという説である。
その一番の対象人物はプーチン大統領であろう。そしてサウジのサルマン国王も既にサウジ国内でも政変の動きがあり、米国もそれを支援している風にも見える。ウクライナのポロシェンコ大統領も支持を失いつつあり、今回の発覚が起爆剤になって議会で糾弾される動きが既に誕生しつつある。
ただ、この説には疑問が残る。
パナマ文書で名前が出てきた元首の一人、アルゼンチンのマクリ大統領の場合には、今回の発覚は逆に米国を不利にする感も否めない。これまで12年間の中国やロシア主体の反米外交から欧米主体の外交に切り換えているマクリ大統領である。
しかも3月のオバマ大統領の同国訪問で両国の間で今後の強い絆が約束されたばかりである。そして南米で反米路線を歩んでいたブラジルが後退する中で、それに代わって欧米路線を歩む南米のリーダー的存在になるべきアルゼンチンなのである。その元首であるマクリ大統領が「パナマ文書」の中で名前が出て来たということは、この「元首を狙った米国の陰謀論」にはそぐわぬものだろう。