通信途絶の天文衛星「ひとみ」、依然として厳しい状況。しかし微かな希望は残る

デブリ衝突説はほぼ否定、衛星自体の異常発生か?

X線天文衛星「ひとみ」の想像図 Photo by JAXA/池下章裕

「ひとみ」の軌道が変わったこと、そして何らかの物体が分離したことを受け、一部報道では「宇宙ゴミ(スペース・デブリ)と衝突したのではないか」とする見方が報じられた。  しかし、その後JSpOCは、「『ひとみ』が何かと衝突したという痕跡は見つからなかった」と発表している。詳しいことは不明だが、分解が生じたと考えられる時刻に、「ひとみ」の周囲に衝突しそうな物体が見当たらなかったことや、物体の飛散具合などから、そのように結論付けられたと考えられる。  1日の記者説明会では、JAXAもこの同じ見解であるとし、「今のところデブリが衝突したという証拠はなく、衛星自体に異常が起きたものとして調査を進めている」と説明した。  しかし、それでは衛星自体に異常が発生する兆候があったのかといえば、今のところそれも見つかっていない。 「ひとみ」は2.7トンもの質量をもつ大きな衛星である。それだけ大質量の物体の軌道を変え、数個の物体が分離するとなると、相当にエネルギーの大きな破裂や爆発が起きたことになる。  だが、たとえば衛星にあるスラスターという小さなロケット・エンジンは、その仕組み上、爆発は起きないようになっている。バッテリーの破裂も起こりうるが、問題が発覚する直前までに送られたデータを解析したところ、温度状態などから破裂が起こるとは考えられないとし、さらに破裂してもそのガスを逃がすための弁があるという。また「ひとみ」には、一部の観測機器の冷却に使う高圧ヘリウムが搭載されているが、さすがに衛星を吹き飛ばすほどのエネルギーは出ないだろうと推測されている。  このデータが得られたより後に状況が急変した可能性はあり、また簡単には説明できない、複合的な要因で何かが起きた可能性もあるが、現在までに得られているデータだけでは、衛星内部で何が起こったかを突き止めるのは難しいという。
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「ひとみ」から発生した物体にはかなり大きい物も?
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