リネン吸着法によるセシウム137の測定結果比較
リネン布を用いた測定では、ちくりん舎がある日の出町内でも放射性セシウムが観測されている。町内には、東京多摩地域の自治体から出た可燃ゴミの焼却灰を原料に用いるエコセメント工場が稼働。日量400トンのエコセメントを生産している。
ちくりん舎では2014年3月末、エコセメント工場近くで測定を実施。同2.9ミリベクレル時を検出した。
「工場の排気に放射性セシウムが含まれているものと推定しています。ゴミ焼却灰の加熱時に出るガスはバグフィルターを通して排出されます。その際、ゴミ焼却灰に含まれていた放射性セシウムがガスに混じり、バグフィルターで捕集しきれないものが放出されているのではないでしょうか。稼働状況などは変わっていないので、現在でも状況は同じでしょう。
リネン吸着法では半減期の短いセシウム134も検出しており、その線量はセシウム137との相関関係が認められます。したがって、今回の検出は東電原発事故によるものと考えられる」と青木さんは話す。
一方、エコセメント工場を運営する「東京たま広域資源循環組合」によれば、工場の排気から放射性物質は検出されていないという。
「測定は排ガスの流路で行っており、2016年1月の測定結果ではND(不検出)です。検出下限値は排ガス1立方メートルあたり1ベクレルですが、これは都の指針である同2ベクレルより厳しいものです。ちくりん舎の測定に関してはコメントする立場にありません」(循環組合担当者)
ちなみに、この検出結果との比較を目的に、ちくりん舎が隣の青梅市内で行った測定では、放射性セシウムは検出されなかった。「エコセメント工場での検出下限値が高すぎるので、それをすり抜けたものが検出されたのでは」と青木さんは見る。
東京電力は、福島第一原発から放出された放射性物質について「無主物」、つまり誰のものでもないとの立場を取っている。しかし放射性セシウム137の半減期は約30年。数値は低いとはいえ、事故がなければする必要のなかった被曝だ。事故によって余計な被曝を強いられる状況が、福島県の内外で今も続く。<取材・文/斉藤円華>