アルジャジーラの大幅人員削減の、原油価格下落以外の理由とは何か?
それは、中東においてライバルのテレビ局も誕生していることだ。例えば、サウジがリーダー国となっている「アル・アラビア」やイランが背後にいてアルジャジーラで活躍していたスタッフを招聘してベイルートから放送している「アル・マヤディン」などである。
さらに、歳入の大幅減少にも拘らず、カタールは今もシリアのアサド政権の崩壊を狙ってアル・ヌスラ戦線、アーラー・アル・シャム、ジェイシュ・アル・イスラムなどの反政府派に毎月2000万ドル(28億8000万円)を資金提供していることも『
HispanTV』で報じられている。
カタールのタミーム現首長はトルコと同盟関係のような間柄にあり、シリアのアサド政権を打倒するまでトルコと一緒になって反体制派を支持し続ける構えでいるようだ。トルコがロシアの戦闘機を撃墜したことで、ロシアからトルコへの投資などが引き揚げたあとの穴埋めをカタールが一部行なっている程に両国の関係は深い。このカタールの政治姿勢がアルジャジーラの人員削減にも間接的に繋がっているのである。
閉鎖的な中東の放送局でありながら、事実に即した報道姿勢が評価され視聴者を増やしていったアルジャジーラ。この苦境を乗り越えることができるのだろうか?
<文/白石和幸 photo by
Wittylama on Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。