日本の天文衛星「ひとみ」が通信途絶。世界最先端の宇宙望遠鏡に一体何が起きたのか

X線天文衛星「ひとみ」の想像図 Photo by JAXA/池下章裕

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月27日、X線天文衛星「ひとみ」に、衛星との通信ができないという問題が発生していると発表した。その後も地上から衛星の状態を確認したり、制御したりすることもできない状態が続いており、3月28日現在、復旧の見通しは立っていない。  「ひとみ」は今年2月17日に打ち上げられた衛星で、X線を使って宇宙を観測することを目指している。X線というとレントゲンでおなじみだが、実はX線はとても熱い、高温になっている場所から出るという性質がある。宇宙の中には、ブラックホールや超新星残骸といった激しく活動し、非常に高温になっている場所がいくつもあり、そこをX線を使ってみることで、その謎や正体を知ることができる。  X線を使って宇宙を観測することを「X線天文学」という。この分野は約50年前にはじまり、世界中で研究が行われているが、日本はその中でもトップレベルにいる。  「ひとみ」はJAXAをはじめ、米国航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)、そして日本国内外の大学などが共同で開発した、国際的な「宇宙に浮かぶ望遠鏡」である。世界最先端かつ唯一無二の性能をもち、世界からの期待も高い。  「ひとみ」は打ち上げ後、まず太陽電池や通信装置などが正常に動くかどうかの確認が行われた。その後、「ひとみ」の肝である望遠鏡などの機器にスイッチが入れられ、試験観測などを続けていた。これまでトラブルは見られず、本格的な観測を始めようとしていた直前での出来事だった。
次のページ
3月26日の夕方に通信異常が発生
1
2
3
4
5
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会