ナポレオン、徳川家康、エジソン――歴史上の偉人がTEDでプレゼンしたら何を話す?
2016.03.24
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こんにちは、フィンセント・ファン・ゴッホです。
私は画家という仕事をしておりましたが、なんせ生涯で一枚しか売れなかったもので、職業と言えるかどうかも怪しいものなんですが……まぁこの話は追々するとして、本日お話ししたいのは、「不幸」についてです。
人間は、生きていればつらいと思うこともあるでしょう。自分がまるで世界で一番不幸かのように感じてしまうこともあるかもしれません。
大変、同情はします。
しかし、断言しますが、私以上に不幸な人間はいません!
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もう、これだけでおかしい。少しでもその偉人の逸話や人となりを知っていたなら、軽く目を通しただけで吹き出してしまうような発言が随所に散りばめられている。そして、そうした逸話や人となりに詳しくなかったのであれば、「あ、この人はそもそも、そういう人だったのか」「これまでうっすらとエピソードは知っているつもりだったけど、その背景にはそんな出来事が隠されていたのか」と新たな発見ができたり、理解を深めたりするのにも役立つ。もちろん、だいぶ端折られた内容なので、本書を読むだけでその偉人の詳細を把握できるわけではないが、大枠を理解することはできるだろう。
本書には、人生訓や自己啓発文脈として読み解ける言説もそこかしこに盛り込まれている。以下は平安貴族界随一の成功者・藤原道長の章に登場するくだりだ。
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あの時代、まわりからすれば私ほど成功した人間はいないでしょうし、うらやましいと思われたことは数え切れないことでしょう。
……そう、まわりは、そのように思うのです。
しかしながら、当事者であった私の心境はどうだったかと言いますと、
「怖くて怖くて、不安で仕方なかった」
ということに尽きます。
今だから言いますけれど、もう、毎日が苦痛で仕方ありませんでした。
(中略)
それでも、なぜ政治家人生を一応は最後まで務められたのか。
これはひとえに、「それでも、動き続けたから」ということに他なりません。
回遊魚は泳ぎを止めれば死んでしまうと言いますが、それと同じようなことですね。
つまり何が言いたいかといえば、不安だからこそ動け、ということです。
少なくとも、目の前の何かに没頭していれば迫り来る不安や恐怖に飲み込まれることはありません。不安や恐怖というのは、立ち止まっていればいるほど、大きく、強くなっていくものだからです。
問題を放置しない、今やれることは今やって、今やれないことはやらずに、夜はぐっすり眠る。
頭を働かせ、動き続ける、ということを習慣化すれば、まぁ多少の心労があっても何とかなる、という自信もできていくはずです。
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……こんな調子で、自己啓発文脈に頻出する“自己啓発あるある”的な言説も少なくないので、うがった見方をすれば、ちょっとブラック風味な自己啓発書パロディーにも読めなくもない。が、素直に読み解いていけば、なるほどと頷けるような箴言も、数多く盛り込まれている。
また、とくに若いビジネスパーソンにとって役立ちそうな側面として、本書をプレゼンテーションの構成や、スピーチ原稿のまとめ方を学ぶための参考書的に活用するのもアリだろう。誰にでも理解しやすい言い回し、心地よいテンポで飽きさせない展開など、本書の文章には、スピーチ、プレゼンテーションの勘どころが盛り込まれているように思えてならない。
小難しいプレゼン技術の本を読む前に、まずは本書に触れて、たとえば端的に綴られた短めの一文で文章を構成したり、ポイントで要点を繰り返したり、聴衆に問いかけたりといった基本的な所作をアタマの中にセットしておく。それだけで、人前でのトークの質がグンッと改善してくるのではないだろうか。
ただのおもしろ雑学本として読み飛ばしてしまうのは、ちょっともったいないくらいの実用的ヒントを隠し持った一冊である。
【深読みビジネス書評】『退屈な日常を変える 偉人教室』(五百田達成 文響社)
<文/漆原直行>
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『退屈な日常を変える 偉人教室』 偉人たちはなぜ人生を全力で駆け抜けることができたのか? |
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