このような状況下で、ギリシャ政府にとって、歳入の増加は急務となっている。
ただ、その為に、結局国民にしわ寄せがいっているのも問題だ。税金の値上げや社会保障費の負担額も6.5%から27%に増額したのだ。
そもそもギリシャは、ユーロ債権グループとの交渉前までは50代で退職できて年金が貰えた国である。年金負担額はGDPの17%を占めていたというEUの中でも最も高い年金負担率であった。それを年金制度改革によって年金適用年齢を67才に繰り上げた。そして消費税も値上げした。全て1年前にシリザが選挙で公約したこととは全く正反対のことを実行しているのだ。
これもすべて、ユーロに留まるため。ただ、そのためだけにユーロ債権グループからの支援金に依存する限り、シリザの公約違反と国民の負担増は続くことになる。しかも、ドイツ主導の財政緊縮策に従う限り、債務の減免も容認されない現状では、景気の回復はなく企業の閉鎖は連鎖的に続く。即ち、歳入の増加は期待出来ないということである。
チプラス政権になってゼネストは既に3回起きた。2008年からギリシャ経済はGDP比で30%の後退をしている国である。景気回復の見込みはなく、失業者も増えるばかりである。ギリシャ経済が立ち直る見込みは全くない。国民の不満はどんどん蓄積されている。
<取材・文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。